ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1410

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と四十一

「シンボウエンリョ?」

 「深謀遠慮(シンボウエンリョ)」

 「えっ」

 「遠謀深慮(エンボウシンリョ)ともいうらしいが」

 ドチラも、初耳。

 「どういう意味なのですか」

 「ウンと先まで見通した、見据えた、策に策を重ねた謀(ハカリゴト)だな」

 謀?

 ソレって、いい意味なのか。

 「誉め言葉ですか」

 「さあ、どうだろう」

 ん?

 「ナンとも言えねえんだよな~」

 なんとも言えない?

 「たとえば、あの、Duchenne Smile(デュシェンヌ・スマイル)と言われる作り笑いではないホンモノの笑顔。も、とくにあの人たち、政治家が、妙に頻繁に見せるとなると、ソレは、やはり、我々が抱いている『謀』の負のイメージに、一気に、舵を切ってしまう」

 デュ、デュシェンヌ、スマイル?

 またまた初めて耳にする。

 単語一つ一つの意味もよくわからないのに、深謀遠慮からの、謀、作り笑い、ホンモノの笑顔、に、至る話の流れもまた、ソレ以上に、全くもってナンのことやらサッパリ。

 「とくにこの国において、女性の怒りは、強さは、一つ間違えると『女性特有のヒステリー』、『女だてらに』、『女のくせに』、みたいなことになってしまいがちだからな」

 うわ~。

 まさに、あの、ジェンダーバイアスってヤツだ。

 「だから、戦略ツールとして、戦術として、『ホンモノの笑顔』で勝負に出るわけですか」

 こうなると、もう、ナニがホンモノの笑顔でナニが作り笑いなのか、が、わからなくなってくる。

 「長い年月をかけて男たちがつくり出した社会の歪みには、歪んだ笑顔で立ち向かわなければ勝ち目がないと踏んだのだろう」

 なんということだ。

 この社会で女性が勝ち上がるためには「ホンモノの笑顔」という作り笑いを戦略ツールとして、戦術として、使わざるを得ないのだとしたら、コレは、もう、悲劇以外のナニモノでもない。

 「そんなモノが深謀遠慮の精神だとは、到底、思えないが、しかし、だからといって単純に、エラそうに、そうした女性を批判するのもまた、完璧に、ミソジニー、だよな」

(つづく)