はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と三十六
「ヤジ ト ケンカ ハ エドノハナ」
現地で、大好きな沖縄で、食べる沖縄そばは格別。中でも、以前、たまたまフラリと立ち寄った店のヒージャー山羊そばは、そのコンセプトも味も、匂いも、屈指。パワフルな匂い系に強い私も、珍しく怯(ヒル)んでしまったほどである。けれど、スーパー島ヤサイ、島ヨモギ、フーチバーが、その匂いを単に消し去るのではなく、包み込んでくれるから、大丈夫。
そう、包み込んでくれるのである。
そして、裏庭では、いずれ、私たちにその肉を提供してくれることになるヒージャーが、ヤギが、ノンビリと日向ぼっこなんぞをしていたりする。
「ヒージャーにはフーチバー。みたいな、そんな高い次元での鬩(セメ)ぎ合い、関係、が、たとえば国会にもほしいな、って、思っています」、と私。
「ヒ、ヒージャー?、フーチバー?。な、なんだよ、それ」、とAくん。Mr.唐突感は、相手が繰り出す唐突感には、滅法、弱い。
「ヤギにヨモギ?。ますますわかんねえな」
「国会答弁、あるいは所信表明演説、という『ヤギ』には、『ヨモギ』のような『ヤジ』が必要なのです」
「いやいやいやいや、ソレって、ナンか、無理くり感がエゲツなくねえか」
「いえいえいえいえ、そんなことはないです。単なる匂い消しではない、グッドタイミングな、腐りかけたその根っこを抉(エグ)るかのような、ソレでいて包み込むかのような、ヤジは、まさに、火事、ならぬ、ヤジ、と、喧嘩は江戸の華。なのではないかと」
「思うわけだ、君は」
そう、ヤジと喧嘩は江戸の華。
誰も褒めてくれそうにないが、我ながら、上手い例えだと思う。
「ソレを、自分たちが宣っているその内容のナンともカンともさを、捨て置けないダークな部分にメスを入れられない至らなさを、ゴマ化しを、棚に上げて、エラそうに、『国会の品位を守るため』って、いったい、どのツラ下げて、って感じ。ピント外れも休み休みにしてちょうだいね、としか、私には思えないのです」
「怒ってるね~。つまり、つまりだ。まずヤギの方が、ヤギはヤギらしく『品位ジャー、たれ』と、いうことだな」
ヒンイジャー?、あ、あ~、品位ジャー。
「そうです、そういうことです。ヤギはヤギらしく、ナニよりも、まず、その品位ジャーのヒンイジャーを全身全霊を尽くして目指す、べきなのに、しようともせず、どころか、しようとも思わず、澄ました顔で、フーチバーに、ヨモギに、『もうやめた方がいい』、『子どもに見せれない』、『恥ずかしい』などと宣ってしまう、宣ってしまえる、そのズルさ、狡(コス)さ、姑息さ。怒りを飛び越えて悲しくさえなってきます」
(つづく)