はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と三十三
「ノウテンキナ キット ダイジョウブ?」
「この世が、もし、終焉を迎えてしまったとしたら、その終焉の原因であったであろう最も出だしの過ち、って、いったい、ナンだと思う?」
しゅ、しゅ、終焉!?
復帰後も、Aくんの、例のあの恐ろしいまでの唐突感は、健在。
この世の、この世の終焉、か~。
トンでもない数の悪魔の核兵器を平和のために、などと、ぬかしつつ、つくり続けてきたわけだから、その「終焉」、単なる「杞憂」と軽んじるわけにもいかなさそうだ。
しかし、その原因となった最も出だしの、過ち、と、なると、・・・。
能、天気。
能天気、かも。
そう、能天気。
「どんなに怪しくてもイヤな予感がしても、『ナンといっても、大好きなあの人がすることだもの、きっと大丈夫』、とか、『ナニがナンでも、やっぱり、この国を、いま一度(ヒトタビ)強い国にしようとしてくれているんだもの、きっと大丈夫』、とか、『トにもカクにも、とりあえず、円は下がっているけれど株価は上がっているんだもの、きっと大丈夫』、みたいな、そんな、一般ピーポーたちの底抜けに能天気な『きっと大丈夫』が、ひょっとしたら、その最も出だしの『過ち』のような気がします」
苦肉の、この、「この世の終焉は能天気な『きっと大丈夫』の、せい」理論。我ながら、ちょっと自信がある。
「能天気な『きっと大丈夫』ね~。ほ~ほ~ほ~ほ~、それ、言えるかも。だけど」
うわっ、きた。いつもの、重箱の隅をつつく、かの如くのカウンターパンチ、か。
「だけどだ。その『能天気』、おそらくは、元々、頭の中が雲一つないぐらい晴れ渡り、澄み切った、という、ドチラかというとプラスの意味であっただろうに。ソレが、ナゼ、その晴れ渡った状態が永遠に続くとバカみたいに思い込んでしまう、という、頭の中『空っぽ』みたいなマイナスの意味に、なっちまったんだろうな」
あ、あ~、あらためてそう言われると、たしかに、晴れ渡り澄み切っているというのに、どうして能天気が負のイメージまみれになってしまったのか、不思議と言えば不思議だ。
「ナンにせよ、君のその、『能天気』が、『きっと大丈夫』が、この国の、この星の、この世の、首を、ジワジワと、ジワジワと絞めていったのだろう、という考え。結構、シックリくる」
やった~。嬉しがっている場合ではない、とは思うが、なんか嬉しい。
「頭の中空っぽの『能天気』、心底、恐るべし、だよな」
心底、恐るべし、か~。
なんか嬉しい、と、思いはしたものの、さすがに気持ちがズンと重く滅入ってきてしまう。
大急ぎでソレを洗い流そうと、生マッコリを、グビリと。(つづく)