はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と三十二
「ウィンウィン ノ イノチゴイ ダイサクセン!」
「ナニからナニまでウィンウィンの命乞い大作戦、丸出しだよな」
ウィンウィンの命乞い、作戦?
またまた私の独り言が聞こえてしまっていたのか、そう吐き捨てるように語りながら、そして、例のその匂いを漂わせながら、Aくん、やっと、やっと戻ってくる。
「ナニをされていたのですか」、と、さすがに、少し、つっけんどんに、私。
「瀕死のマイナンバーカードにしても、アップアップの政党たちにしても、ナニがナンでも背に腹は代えられぬ命乞い大作戦。生き存(ナガラ)えるためには手段を選ばない」
私の質問には、パーフェクト、スル~。ま、いいけど、まるでドコかの地方自治体のトップのよう。
「権力もカネも、そう簡単には手放さねえぜ、って、感じなんだろうよ」、と、さらにソコに被せるように吐き捨てつつ、あの匂いの元をトンとテーブルの上に。
うわっ、美味しそう。
そして、ナニやらカルピスっぽい中身のペットボトルとグラスも、ドン、トン、トンと。
「パ、ジョ~ン」
パ、ジョン?
「チヂミね」
あ、あ~。
「風(フウ)の、大阪名物、ネギ焼き」
かなり回りくどい言い回しだけれど。
「に、冷蔵庫の奥で眠っていた、生、マッコリが、絶妙に合うわけ」
なるほど、なるほど、韓国であろうが大阪であろうが目の前のコレと、ソレ。たしかに間違いなくベストマッチングなんだろうとは思う。ソレほど、見るからに美味しそうなのである。
「このネギ焼きと生マッコリと、みたいな、相乗効果が大いに期待できる『ウィンウィン』ならナンの問題もねえんだがな」
と、呟きながら、トクトクと、トクトクと。
綺麗な色。
「国産コシヒカリに韓国産の麦麹。ドチラもいい仕事をしてくれているんだよな~」
あまりに美味しそうなので、たまらず、まず、ネギ焼きを一切れ。
すると、口の中にブワッと韓国と大阪が。
後(オク)れをとるまいと、大慌てで、ソコに、その生マッコリを、グビリ。
合う。合うわ~。
ネギ焼きに塗られた酸っぱ甘辛い味噌系のタレに、スッキリとマロヤカに生マッコリが絡みながら、喉を、トゥルトゥルと通過していく。
ホント、マジ、美味しい。
Aくんが言うように、こんなウィンウィンならナンの問題もないだろうに。(つづく)