ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1387

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十八

「イレイサイ? フウカ? ビカ?」

 「慰霊祭」

 ん?

 「慰霊祭に参列したことはない」

 慰霊祭に?

 どうせ、またまた、「ついでに、もう一つ」とくるに違いないと思い込んでいたものだから、少し、肩透かし、感。

 「のだけれど、戦没者たちへの哀悼の意を、もち続けてはいる。愚かなる同じ過ちを繰り返さないためにも、新たなる戦没者をこの世に生み落とさないためにも、けっして忘れるべきでないとも思っている」、と、いつになく静かに、それでいて力強く、語り始めたAくん。

 慰霊祭。

 慰霊祭、か~。

 ナニかと不謹慎極まりないこんな私でも、年に一度ぐらいは、関連書物を読み、関連特集番組を見て、自分なりに思い、考える、ようにはしている。そうしなければ、自分の中から「そもそも無かったモノ」として消え去ってしまいそうな、そんな危機感を抱いているからである。

 「時間の経過とは恐ろしいもので、どんなにトンでもないコトであったとしても、風化する。どころか、場合によっては美化さえされてしまう。その風化と美化に、どうやって抗(アラガ)うか。が、僕たちに課せられたtask(タスク)、課題なんじゃねえか、ってな」

 風化、どころか、美化、か~。

 たしかに、このところの、あの、妙に美化されがちな風潮には、かなり危ないモノを感じている。

 「つまり、つまりだ。哀悼の意と美化は、ナニもカもが根本的に違う、ってこと。ソコの違いがわからなくなってしまったら、どうしても、ズルズルと、同じ轍(テツ)を踏むことになってしまいかねない、と。いや、きっとそうなってしまう、と。思うわけよ、僕は」

 同じ轍を踏む、か~。

 あっ。

 そういえば。

 ある地方自治体のトップが、慰霊祭に代理人を立てて、己は、かき氷を食しつつ高校野球観戦を。という、かなりチャレンジングな行動を取られたようだ。地元の高校を、高校球児たちを、直接、現地で応援したいという思い、不謹慎極まりない私なだけに、わからないわけではない。しかし、そのコトを、わざわざ、SNS(エスエヌエス)に投稿を。と、なると、申し訳ないが、さすがの私も支持し切れない。

 ソコに、トップとしての、慰霊祭への、慰霊祭に参列されている方々への、配慮も、哀悼の意も、残念ながら、一切、感じられないのである。

 おそらく。

 ソレもまた、風化がなせる業(ワザ)なのだろう。

 風化は、やがて、Aくんが危惧する美化さえも。そして、その美化は、Aくんの指摘通り、いずれ、同じ轍を踏むことにも。ズルズルと、ズルズルと繋がっていくかもしれない。(つづく)