はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十七
「ツライカラ ミミココチノ イイコトバニ コロリト」
「ついでに」
「もう一つ、ですか」
「そう、もう一つ」
エンドレスだな、間違いない。
「日々の生活が、人生が、あまりにも辛いから、辛くなったその原因のその根本にメスを入れ、膿(ウミ)を出しつつ、クールに、できる限りクールに、考察し、究明し、ナニもカも明白(アカラサマ)にして、やり直す。ナニがナンでもやり直す。が、本来の『筋(スジ)』。なんだけれど、ヤヤもすると、どうしても、辛いから、辛過ぎるから、叩き易いダレかを、ナニかを、徹底的に叩いてしまいがち。あたかも、そのダレかさえ、ナニかさえ、排除できれば、消え去ってくれれば、この辛さから解放される、かのような錯覚、妄想。を、抱かせてくれる、そんな、ヤタラと耳心地がいい言葉。に、つい、コロリと。というのが、この今の風潮。なんじゃねえか、ってな」
そう、一気に、「辛いから耳心地のいい言葉にコロリ」理論を展開した、Aくん。ボンヤリとだけれど、この私も、ほぼ同感ではある。
「その、コイツを叩けば、コイツさえ排除できれば、この、辛さから解放されるという発想って、一歩間違えると、戦争にも繋がりかねないですよね」
この、私の危惧。懸念。は、このところのヤタラと勇ましい戯言(タワゴト)に群がりがちな風潮、に、対して、私が抱き始めている、危惧であり懸念である。
「繋がりかねねえだろうな。非の打ち所のない錯覚なのに、ナゼか、その手の勇ましい戯言が、妙にポジティブに聞こえちまう」
ポジティブに?
ポジティブに、聞こえてしまう、か~。
「ソコには破壊と絶望しかないのにポジティブに聞こえちまう、悲劇。罪深いよな」
ん~。
破壊と絶望しかない。にもかかわらず、つい、耳心地のいい、だけの言葉に、酔いしれる。熱狂する。ソコに、Aくんが必要不可欠と言い切る「クール」なんて、微塵もない。ナゼ、酔いしれる?、ナゼ、熱狂する?。不思議で、不思議でならない。
「何度でも」
ん?
「何度でも言わせてもらおう」
んん?
「cool 、クールでなければならない。もちろん、冷淡という意味ではない。冷淡ではなく、冷静。そう、冷静。その冷静さが、カッコいいんだ。イケてるんだ」
カッコいい、イケてる、か~。
それ、それこそが私の「クール」のイメージ。
だけど。
上っ面だけの薄っぺらい心でも頭でもない、深く澄んだ心と頭。が、なければ、その「クール」、そう簡単には自分のモノに、ならなさそうだ。(つづく)