はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十三
「イキスギルト ミギモ ヒダリモ ツナガル?」
「circle(サークル)、cerchio(チェルキオ)、kreis(クライス)」
ん?
「円、輪っか」
んん?
「だから、行き過ぎると、グルッと回って右も左も繋がっちまう」
右も左も、繋がる?
「しかも、お互いに、行き過ぎた点を、愚かであった点を、真摯に反省し、謙虚に握手、みたいな、そんな感じ。では、ない」
んんん?
「むしろ、最悪の形の握手」
最悪の形の、握手?
「もちろんアプローチは違うだろうけれど、おそらく、右も左も、最初は、ピーポーたち一人ひとりの幸せを第一に考えていたはずだ。しかし、どうしてもズルズルと行き過ぎてしまう。国が~、国家が~、と、吠え始める。そのためには、ピーポーたち一人ひとりの幸せなんて、権利なんて、自由なんて、と、ナゼか、なっちまう」
んんん、ん~。
「世界に目を向けてみろよ。イデオロギーの違いなんて関係なく、右も左も、結局は、同じ臭いを放っているように思わねえか」
行き過ぎると、同じ臭い、か~。
ようやく、なんとなく、話の趣旨が見えてきた。
「右も左もドチラも、巨大な権力を握っちまうと、お決まりのように『権威主義』臭を、『独裁』臭を、放ち始める。コレが、最悪の形の握手。わかるかい」
わかるような気がする。
「円であるがゆえに、つまり、行き過ぎた右と右との距離よりも、行き過ぎた右と行き過ぎた左との距離の方がウンと近い、ということですね」
「ちょっとヤヤこしいが、そう、そういうことだ。たとえば。極左と言われているある国が、いわゆるリベラルな他国の、極右と言われている政党を応援する、なんてことだって、当然の如く起こり得るわけだ」
あっ。
それ。それっぽい、こと。ニュースかナニかで耳にしたような。
「右が~。左が~。じゃ、ねえんだ。そんなコト、いくら叫んでみたところでナニも良くなりゃ~しない。そんなコトよりも大事なのは、全てのピーポーたち、一人ひとりの幸せを、嘘偽りなく、真剣に考えているのか。それとも、関係のある誰かのことしか考えてねえのか。を、見極める、目を、耳を、鼻を、頭を、心を、魂を、もつことだ」
(つづく)