ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1380

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と十一

「ナゼ アヤマレナイ ナゼ ヤメロトイエナイ」

 誤報

 訂正。

 謝罪。

 自慢するわけではないが、そういう私も、幼少の頃、いや、もう少し高学年になっても、とにかく謝るのがイヤだった。

 まず、己の非を認めて謝る。で、なければ、未来に向けての一歩を踏み出すことができない、と、わかっているのに、謝れない。母親にも何度も叱られた。というか、呆れ果てられた。そのことを、今でもリアルに覚えている。

 「ナゼ、人は、己に非があるとわかっていても謝りたくないのでしょう」

 「己に非があると?」

 「謝らなければ次の一歩が踏み出せないのに、ナゼか、そう簡単には謝れない」

 「己に非があると、なんて、本気で思っているのかね~」

 えっ。

 「己に非があるとなんて思ってないということですか」

 「己に非があるとわかっていても謝れない時は、そりゃ、謝るわけにはいかない事情がイロイロとあるんだろうよ。しかし、おそらく、ほとんどの場合、己に非があるなんて思ってねえんじゃねえか、ってな」

 ん~、己に非があると思ってない、か~。

 私も、そうだったのかもしれないな。

 だから、どんなに指摘されても、追求されても、ナニを仰(オッシャ)っておられるのか、サッパリ。それゆえ、理解も納得も、もちろん謝罪も、できない、か。

 「つまり、ドチラにせよ謝らない、謝れない、と」

 「そう、そういうことだ。とくに政治家。己に非があるとかないなんて全く関係なく、見事なまでに、ナニがナンでも謝らないよな~」

 そう、謝らない。

 見事なまでに、ナニがナンでも謝らない。

 「もちろん、皆が皆というわけではない。己に厳しい政治家も数多くいる。だけど、謝らないヤツに限って、ヤタラと目立つわけよ」

 そう、目立つ。

 ヤタラと、目立つ。

 ん、ん?

 先ほどの、謝るわけにはいかないイロイロな事情、が、ナゼか、妙に、引っ掛かってしまう。

 謝るわけにはいかない、そのイロイロな事情、の、その時って、いったい。

 「先ほどの、謝るわけにはいかない時って、どんな時ですか」

 「第三者

 「えっ」

 「たとえば、ソコに、第三者が介入している時」

 第三者の、介入?

 「第三者を。つまり、お仲間を、グルを。裏切るわけにはいかねえからな」

 裏切る?

 己の非を認めて謝ることが、裏切る、ことに、なるとは。

 「そんなお仲間なら、グルなら、サッサと裏切っちまいなよ、って。でなきゃ、アンタも同じ穴のムジナ扱いされっちまうぜ、って。僕なんかは思うんだが、悲しいかな、この世の中、そうは問屋が卸さないコトだらけだからな」

 ホントだ。

 悲しいぐらい、そうは問屋が卸さないコトだらけだ。

 ん、んあ、あっ。

 そ、そうか~。

 だから、謝るわけにはいかない。

 だから、「やめろ」と言うわけにもいかない。か。

 なるほど、そういうことか。

 Aくんが言うように、その理由が、ソコに第三者の介入があるからなら、まず、真っ当な行政運営なんてできないだろうな。

 そう、できない。できるわけがない。

 ジワジワと、フツフツと、その思い、確信に変わっていく。(つづく)