ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1377

はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百と八

「ジュウゴエン ゴジュッセン ト イッテミロ?」

 「十五円五十銭と言ってみろ」

 「えっ」

 「15円、50銭、と、言ってみろよ」

 な、なんだ?、ナニかの呪(マジナ)いか?

 「100年ほど前、この国で、このフレーズが、選別に、差別に、虐殺に、使われたという」

 ぎゃ、虐殺に!?

 15円と50銭が、ナゼ、虐殺に、なのか。全くわからない。

 「そのフレーズが、どう、虐殺に繋がっていくのですか」

 「『排除すべき者』を炙(アブ)り出す装置として使われた、ってことだ」

 排除すべき、者?

 炙り出す、装置?

 「まず、その根底に、dark(ダーク)でheavy(ヘヴィー)な差別があって。あるコトが切っ掛けで、その差別が、一気に、憎悪を覚醒。増幅。そして、残虐な集団心理を、同調現象を、引き起こす」

 残虐な集団心理を、同調現象を、か~。

 あっ。

 たしか、そんな映画が、少し前、公開されていたような。

 「『十五円五十銭と言ってみろ』。上手く発音できなかったら『よそ者』。よそ者は『排除すべき者』」

 うわ~。

 「そうなってしまうと、もう、誰にも止められない。狂気へと、虐殺へと、繋がっていくわけだ」

 なんということだ。

 「もちろん、御多分に洩れず、歴史修正主義者たちは、この事件を『捏造』扱いしているようだがな」

 ん~。

 あの人たちは、いつだって、気に入らない史実は、捏造だ~、でっちあげだ~、と、宣いがち。余程、受け入れてしまうわけにはいかないナニかがあるのだろう。

 「そんなこのフレーズが、この現代の、選挙の、その最中にだ」

 えっ。

 「ある政党の支持者の口から飛び出たことに」

 まさか。

 「僕はね、驚きと同時に、いたたまれない悲しみを、大いなる憤りを、禁じ得ないわけ」

 信じられない。

 仮にソレが事実ならトンでもないコト。

 ナゼ、そんな恐ろしいフレーズを、ナンの躊躇もなく、この今、発することができるのか。私ごときには難解すぎて、1ミリたりとも理解することができない。

 「歴史修正主義。と、排外主義。とが、combine(カムバイン)、合体した時の、その、超、very bad(ベリーバッド)感、チョベリバ感。たるや、もう、絶望的な気分にさえなっちまうよな」

 お~、チョベリバ。懐かしい。

 チョベリバには申し訳ないが、もう、完全に死語。だとは思うけれど、その「合体」は、まさにチョベリバ。チョベリバが、一番、ビタッとくる。

 あっ。

 ひょっとすると、コイツもまた、先ほどの、結局は、所詮、自分ファーストの、自利自略。って、ヤツかも。(つづく)