はしご酒(Aくんのアトリエ) その八百
「フドウヒョウ ハ フワライドウヒョウ?」
一目も二目も置かせていただいている、ある、ジャーナリスト、というか、著述家が、この国の浮動票を「付和雷同」票と断じる。
ナニがナンでもカッチンコッチンの岩盤支持層、岩盤支持者たちに、対して、好意的ではない私は、よりアグレッシブでポジティブな「浮動」にこそ、「浮動票」にこそ、前向きな、建設的な、「知性」を感じている。
そんな中での、この、「付和雷同票」呼ばわり。もちろん、浮動票の全てがそうだというわけではないのだろうが、「浮動」推しの私としては、いい気はしない。いい気はしないが、「そんなことはない」と言い返すこともできないまま、「ひょっとしたら」という思いもまたジワジワと、プスプスと、膨らみ始めているのである。
「この国の浮動票は付和雷同票なのでしょうか」
思いっ切り唐突に、そう、Aくんに、問うてみる。
「浮動票は付和雷同票?」
さすがのAくんも、少々困惑の表情。それでも瞬時に体勢を立て直して。
「語呂はいいが、浮動票は付和雷同票ではねえよな。というか、そうであってはいかんだろ」
「と、私も思いたいのですが。でも、考えれば考えるほど、現実は、ジワジワと、プスプスと、『付和雷同』臭が漂い始めているような気がして」
「付和雷同臭が漂い始めている?。いるか。いるな。そりゃ、そうなるか。なるよな~」
そりゃ、そうなるか?
その「そりゃ」が、妙に引っ掛かる。
「そりゃ、そうなるか。って、どういう意味ですか」
「曲がりなりにも元学校の先生として言わせてもらうと。学校でもドコでも、『政治』って、アンタッチャブル扱いなわけだろ」
アンタッチャブル扱い?
アンタッチャブル扱い、か~。
そういえば、少し前、ドコかの大学で、学生が、政治活動とは思えない程度のホンの少しの政治的な活動で処分された、という、そんなニュースを耳にしたような。おそらく、妙な噂が立って、本校の受験を控える、なんてことになってしまったら、あるいは、国に、目を付けられてしまったら、ドウするんだ、ドウしてくれるんだ、などという、情けない懸念、危惧。ゆえの、情けない、情けな過ぎる、対応、処置。なのだろうけれど。
「『政治』を、『政治とはナニか』を、『政治家の、本来、あるべき姿』を、脳ミソが、まだ、pure(ピュア)な間に、丁寧に、クールに、真っ当に、学ぶ、学べる、場所が、この国にはないんじゃねえのか、ってな」
学べる場所が、ない、か~。
さすがに、もう、こんな台詞を吐いておられる先生はおられないとは思うけれど。「はい、ココ、テストに出ますから~」、みたいな、そんな丸暗記系が幅を利かせている従来の社会科の授業では、たしかに、学びようがない、かもしれない。
「真っ当な土台がない、ハートに、オツムに、ウケ狙いの過激なデマやらウサ晴らしのトンでもない誹謗中傷やらが、こぞって、ある日、突然、飛び込んでくるんだぜ」
そりゃ、そうなるか。
(つづく)
追記
「母勦説、母雷同(ソウセツスルナカレ、ライドウスルナカレ)」 (『礼記(ライキ)』より)
勦説とは、他人の説を盗むこと。
雷同とは、他人の意見にムヤミに同調すること。