ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1368

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と九十九

「イキルモ シヌモ スベテ シュクンノ タメ」

 「義。勇。仁。礼。誠。名誉。忠義」

 おっ。

 「南総里見八犬伝、ですね」

 「似てはいるが、ちと違う」

 えっ。

 「アレは、たしか。仁。義。礼。智。忠。信。孝。悌(テイ)」

 Aくんには申し訳ないが、同じモノにしか聞こえない。

 「ナニが、ドコが、違うのですか」

 「違うだろ」

 へっ。

 「と、言いたいところだが、そんなには違わない」

 ほっ。

 「で、その、義、勇、ナンたら、カンたら、って、いったい」

 「武士道」

 「ぶ、武士道、ですか」

 「誰だったかは忘れたが、武士道の教えを、端的に、言い表したモノ。義。勇。仁。礼。誠。名誉。忠義」

 武士道、か~。

 しかし、その武士道が、どうしたというのか。

 「ひょっとしたら、あの人たちは、この『義。勇。仁。礼。誠。名誉。忠義』を、憲法前文に入れ込みたいんじゃねえのか、どころか、憲法の根幹に、中核に、据えてしまいたいんじゃねえのか、ってな」

 武士道の教えを、その精神を、憲法の中核に、か~。

 「あまりにも自分本位に、身勝手に、なってしまいがちな、こんな、現代社会であるだけに、そんな、現代人であるだけに、一つの教えとして、戒めとして、意味はあると思う」

 同感。

 私も、あると思う。

 「あると思うが」

 ん?

 「だが、しかし。この国の民は、皆、こうあるべきと、こうでなければならないと、強要、強制されるモノではないはずだ」

 ん、ん~。

 「『名誉、忠義、に、生きよ』だぜ。ナゼ、そんなコトを強いられなければならないのか。ナゼ、そんなモノのために生きなければならないのか」

 ん、ん、ん~。

 と、いうことは、つまり。

 圧倒的な権力を握ってしまった強者たちは、古今東西、いつだって、シモジモの者たちを、弱者たちを、掌握、管理、支配、したがりがち。だから、そのために、武士道の教えは、精神は、使える。上手く利用できる。と、いうことか。

 「『生きるも死ぬも、全て、主君のために』、に、繋がりかねない危険性に満ち溢れているということだ」

(つづく)