ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1355

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と八十六

「ウマイハナシ ト バイシュウ ト」

 「そんな自治体絡みの、ヤヤこし系が、もう一つ」

 ん?、ナンだろう。

 「どうしても解せないのが、選挙直前の、うまい話」

 選挙直前の、うまい話、か~。

 「このうまい話、なかなかの食わせモノなれど、申し訳ないが、苦しい時であればあるほど、メチャクチャ、うまく感じてしまうわけ」

 申し訳がらなくてもいいと思う。全くもって余裕がない時に、トンでもなく苦しい時に、目の前にぶら下げられた「うまい話」のその問題点に目を向けるなんて、そうそうできることではない。余裕がないのである。苦しいのである。

 「おもわず手を出してしまうのが人情というものですよね」

 「そう、人情。性(サガ)と言ってもいい。背に腹は代えられねえから。だけど、だけどだ」

 ん?、ナンだ。

 「こうした選挙直前に、突然、降って湧いたような、そして、そうした人情に、性に、付け入るような、そんな手口、戦術、丸出しの『うまい話』ってのは、やっぱり、ドコからドウ考えても『買収』としか思えねえわけよ」

 買収か~。

 あっ!

 「そういえば、突然、この夏の水道基本料金はタダ、などと言い出した自治体が」

 「そう、ソレだ、ソレなんだよな、僕が、どうしても解せないのは。ソレって、選挙直前に、各戸の郵便受けにカネ(金)を放り込むのと同じだろ」

 同じだ。

 権力を握っている側が圧倒的に有利なのは、まさに、そのあたりなんだろう。いつだって主導権は、権力者側が握っているのである。

 「渇(カッ)しても盗泉(トウセン)の水を飲まず」

 えっ。

 「コレもまた、孔子の言葉だ」

 またまた孔子、か~。しかも、ナンのことやらサッパリだ。

 「盗泉。盗みの泉。その名前が良くないという理由で、喉が乾いても、けっしてその泉の水を飲もうとはしなかったらしい」

 なんと。

 そういう意味か。孔子らしいと言えば孔子らしいが。

 しかし。

 「名前が良くないだけで、ですか」

 「おそらく、弟子たちへの教えのために、あえて、そうしたのだろう」

 「教えのために、ですか」

 「つまり、つまりだ。たとえ、どんなに辛い状況に陥っていたとしても、盗みに、悪行に、手を染めるな、身をやつすな、という、教え」

 ん、ん~。

 「なんだけれど、我々凡人には、そう簡単にできることではねえよな」

 できない。まず、できないと思う。

 「だから、そういう、実に体(テイ)も都合もいい『合法的買収』としか思えない、ような、姑息で小狡(ズル)い戦術を取るんだろうよ、あの人たちは。悪びれることもなく、平然と、シレッとな」

(つづく)