ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1348

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と七十九

「ヒョウゲン ノ ジユウ ヲ ヒテイスル ヒョウゲン ノ ジユウ?」

 ふと、脳裏に。

 憲法の中でも、高らかに謳(ウタ)われている、表現の自由

 そう、表現の自由

 私は、あの、基本的人権と、この、表現の自由が、とくに好きだ。

 しかし、先ほどの理不尽な「『難癖』扱い」口撃もソウなのだが、このところ、自称「表現の自由」によって、真っ当な、本家「表現の自由」が脅かされつつあるような気がして、ズンと、心が重い。

 「表現の自由、って、ナンだと思いますか」

 思い切って尋ねてみる。

 するとAくん、「表現の自由、ね~」と呟いたあと、またまた得意の、沈黙。

 作品を制作しているAくんであるだけに、彼にとっての表現の自由が、果たして、ナンなのか。が、とても気になる。

 「個人が」

 おっ、沈黙が短い。

 「個人として輝くために」

 グッと身を乗り出す、私。

 「守られなきゃならないモノ、じゃ、ねえのかな~」

 個人。

 個人なんだ、やっぱり。

 「だから、個人の輝きを消し去ろうとするような『表現の自由』は『表現の自由』の体をなさない」

 個人の輝きを消し去ろうとする、か~。

 おそらく、ソレが、巷に蔓延り出している「自称『表現の自由』」なのだろう、きっと。

 「で、でも、そんな、他者の『表現の自由』を頭ごなしに、場合によっては暴力的に、否定するような『表現の自由』が罷り通り始めていますよね。ソレが、なんとも不気味で」

 「不気味に罷り通り始めているよな~。しかも、そんなヤツに限って、己の発言が否定された途端に『表現の自由の侵害だ~』、『憲法違反だ~』などと、オキテ破りの己の阿漕(アコギ)を棚に上げて、もう、マジ、ウルサイウルサイ」

 たしかに、うるさい。うるさ過ぎる。

 表現の自由、と、基本的人権

 個人の基本的人権が守られてこその個人の表現の自由基本的人権が侵害されるような表現の自由表現の自由で非(アラ)ず。と、いうことなのだろう。

 両雄並び立たず、などと、よく言われたりするが、この両者に限っては、両雄、並び立つのである。(つづく)