はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と七十九
「ヒョウゲン ノ ジユウ ヲ ヒテイスル ヒョウゲン ノ ジユウ?」
ふと、脳裏に。
そう、表現の自由。
私は、あの、基本的人権と、この、表現の自由が、とくに好きだ。
しかし、先ほどの理不尽な「『難癖』扱い」口撃もソウなのだが、このところ、自称「表現の自由」によって、真っ当な、本家「表現の自由」が脅かされつつあるような気がして、ズンと、心が重い。
「表現の自由、って、ナンだと思いますか」
思い切って尋ねてみる。
するとAくん、「表現の自由、ね~」と呟いたあと、またまた得意の、沈黙。
作品を制作しているAくんであるだけに、彼にとっての表現の自由が、果たして、ナンなのか。が、とても気になる。
「個人が」
おっ、沈黙が短い。
「個人として輝くために」
グッと身を乗り出す、私。
「守られなきゃならないモノ、じゃ、ねえのかな~」
個人。
個人なんだ、やっぱり。
「だから、個人の輝きを消し去ろうとするような『表現の自由』は『表現の自由』の体をなさない」
個人の輝きを消し去ろうとする、か~。
おそらく、ソレが、巷に蔓延り出している「自称『表現の自由』」なのだろう、きっと。
「で、でも、そんな、他者の『表現の自由』を頭ごなしに、場合によっては暴力的に、否定するような『表現の自由』が罷り通り始めていますよね。ソレが、なんとも不気味で」
「不気味に罷り通り始めているよな~。しかも、そんなヤツに限って、己の発言が否定された途端に『表現の自由の侵害だ~』、『憲法違反だ~』などと、オキテ破りの己の阿漕(アコギ)を棚に上げて、もう、マジ、ウルサイウルサイ」
たしかに、うるさい。うるさ過ぎる。
個人の基本的人権が守られてこその個人の表現の自由。基本的人権が侵害されるような表現の自由は表現の自由で非(アラ)ず。と、いうことなのだろう。
両雄並び立たず、などと、よく言われたりするが、この両者に限っては、両雄、並び立つのである。(つづく)