はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と七十四
「デタトコショウブ ノ カミダノミ?」
「アレコレ考えていたらナニもできやしない」
ん?
「細かいコトばかり気にしていたら、できるコトもできなくなる」
ん~。
「つまり、チャンスの前髪だな」
ん、あっ。
「前髪しかないから、後ろ髪はないから、通り過ぎてしまったら、もう、ソコに、掴む髪なんかない。でしたよね、たしか」
「その通り。『時刻』、『時を刻む』、の、神であるカイロスの前髪は、まさに、その、『時』の象徴というわけだ」
チャンスの前髪は、時の前髪、だったのか。
なるほど、なるほどな。
「アレコレ考えていたら、細かいコトばかり気にしていたら、そのチャンスの前髪を掴み損ねる」
それ、わからなくはないけれど。
「でも、アレコレ考えられないような、細かいコトを気にできないような、そんな、その程度の人間に、ナニかを成し遂げることなどできるのでしょうか」
「できねえだろうな、多分」
「えっ!?」
「できねえだろ、普通」
ド、ド級の肩透かし。
「たとえば、巨額の血税を投入する国家レベルのビッグイベントがあったとして、その企画、計画、段取り、交渉、予算、経費、運営、安全対策、もろもろ、を、『出たとこ勝負の神頼み』で、とりあえず。では、さすがに、納税者たちの理解も支持も得られない」
そりゃ、そうだ。
「はずなんだけれど」
うっ。
「ナゼか、そうはならない」
わ~。
ナゼ、そうはならないのだろう。
理屈抜きの、人気?
血税チュ~チュ~の、旨み?
なんだかコレもまた、不思議でならない。
「言っておくけど、納税者はソレなりに納得したとしても、神さんは、いい加減なヤツには冷てえぜ。そのコトだけは、身をもって感じるコトがあった僕だけに自信がある」
身をもって?
いったい、Aくんに、ナニが、あったのか。ちょっと気になる。
「もちろん、ソレは、『脅(オド)し』としか思えない、あの、ヤタラとカネ(金)に繋がってしまうカルト系のソレとは全くもって異なるんだけれど。とにかく、お天道(テント)様はお見通しだということだ」
お天道様はお見通し、か~。
たしかに、そうかもしれないな。
事前に、ナニがナンでも考えておかなければならないコト、を、怠るその手のピーポーは、申し訳ないが、単なる無能。無責任な能天気。そして、自己保身まみれの詐欺師。だと、言わざるを得ない。そんな無能で能天気な詐欺師の悪行を、愚行を、神様は、お天道様は、いつだって、お見通しだということなのだろう。(つづく)