はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と七十
某国民営テレビ局のある地域ニュースを見ていると、女性活躍ナンチャラカンチャラの会議らしき様子が。オッ、と、おもわず期待し、身を乗り出し、聞き耳を立てはしたものの、申し訳ないが、一瞬にして絶望的な気持ちになる。
なんと。
ほぼ全員が男性。しかも、同じ色味のスーツ、そして、多分、ベテラン勢。背後で2、3人の女性が窓際に置かれた椅子に申し訳なさそうに腰掛けて、黙々と、ナニやら筆記らしきことをしている。
この、男性たちが集まって女性活躍を議論するという光景が、なんとも異様に感じられて気持ち悪くさえなる。
そんなその時、私は、はたと思ったのである。
コレが、噂の、ホモソーシャル、って、ヤツか、と。
そう、ホモソーシャル。
そしてコイツが、なかなか厄介なのである。
「私は、この国のこの社会の必要不可欠な変革の、脱皮の、成長の、足枷(アシカセ)になっているモノの一つが、ホモソーシャルだと思っています」
「ホモソーシャル?」
「男による男のための男の社会」
「あ、あ~、homosocial、ね」
いつもながら、ムダに発音がいい。
「君の言う通り、足枷、足枷以外のナニモノでもない」
評価されることに否定的な私だが、Aくんに賛同してもらえた時はいつだって、悔しいけれど、かなり気分がいい。
「ある人が、『ホモファビア +(タス) ミソジニー =(ハ) ホモソーシャル』だと。最初はナンのことやらサッパリだったのですが、ココにきて、ようやく、ナンとなくながらわかるような気がして」
「homophobia + misogyny = homosocial、ね~。言い得て妙。上手いこと言うよな~、その人。某与党の、その支持者の、主力支持母体の、ほとんどが、この公式にビタ~ッと当てはまりそうだよな」
たしかに、ビタ~ッと当てはまりそうだ。
「ひたすら同姓愛者を嫌悪し、排除し、そして、女性を蔑視し、軽んじ、性的な対象としてしか評価しない。大抵は、ドチラも、出た杭(クイ)のように扱われ、徹底的に打たれる」
うわ~。
「そんな彼らと、ナゼかその考えにドップリ賛同する一部の彼女らが、その先で生み落とした社会、ソレが、homosocial」
あらためて、そのトンでもない厄介さをヒシヒシと感じる。
「でも、ナゼ、ソコまで、ホモフォビアにミソジニーに浸り切ってしまっているのか。ソコのところが、私には、全く」
「わからんよな~。me too、僕も、サッパリだ。けれど、ナニかがあるんだろう。ダークなナニかが、きっと」
ん~、ダークなナニかが、か~。
「ひょっとしたら」
ん?
「あの人たちは、すでに、この現代社会においては、もう、男なんてナンの力も発揮できやしない、と、思って、気付いて、しまっているのかもしれないぜ。そう気付いてしまっているからこそ、ヤタラと、男同士の社会的連帯を声高に訴える」
なるほど。
能力なき哀れなる男たちの、最後の、断末魔の、足掻(アガ)き、か。(つづく)