はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と五十八
「セイジノ ハナシヲ スルコハ ヘンナコ? ワルイコ?」
十代の子どもたちが勝ち取ったモノであるなら、まだしも、単にダレかのナンらかの思惑で、上から与えられただけのモノのイメージがヤタラと強い、あの、選挙権年齢の引き下げ。それゆえ、ソコにへばり付く怪しさを、私は、未だ、払拭できないままだ。
「不思議の国のこの国において、政治の話をする子は、変な子。と、どうしても、思われがちですよね」、と、唐突感丸出しに、私。
一瞬、微かに面喰らった表情を見せつつも、Aくん、「変な子?、どころか、学校じゃ~、『悪い子』呼ばわりさえされかねないぜ」、と。さすがだ。この程度の唐突感で、彼は、まず、怯(ヒル)まない。
「もちろん先生にも学校にもよるんだろうけど、ヘタをすると罰せられてしまうことだってあり得る」
ば、罰せられて、しまう?
「ナゼ、そんなコトで罰せられなくてはいけないのですか」
「ソレほど『政治』は、教育現場では煙たがれている、タブー視されている、と、いうことだ」
タブー視、か~。
「ですが。で、あるにもかかわらず、ナゼか選挙権年齢だけは引き下げられてしまう。コレって、矛盾していませんか」
「矛盾?、してるさ~、もちろん。子どもたちから、目一杯『政治』を遠ざけておいて、突然、降って湧いたような選挙権、だからな。ナンか、臭ってくるよな~」
おっしゃる通り、プンプンと臭ってくる。
「偏向、教育」
ん?
「あの人たちが考える偏向教育の定義が、そもそも、ずれてる、というか、おかしいんだ」
んん?、偏向教育の、定義?、おかしい?
「巨大な権力を握っている者にとって都合が悪い教育を、政治教育を、都合よく排除するためのツールとして『偏向教育』があるとしか思えない」
排除するための、ツール?
「子どもたちが余計なコトを考え出さないように、『政治を学ばないことが、語らないことが、学校教育の中立性を担保すること』みたいなコトになっちまっているんだろうよ」
な、なんということだ。
「で、で、ですが、突然、降って湧いたような選挙権、な、わけですよね」
「都合のいい票になってくれる、と、思ってたんだろ」
都合のいい、票?
「と、思っていたら、同じ保守でも亜流の、ドチラかというと新自由主義的な傾向がより強い新顔の、あるいは、新顔っぽい顔に摺り替えた、政党に、若者たちの票が流れがち、という、見事なまでの思惑外れ。笑っちまうよな」
申し訳ないが、全くもって笑えない。けれど、Aくんのその分析、それほど的外れでないようにも思える。
とはいえ、ソチラの思惑は外れ気味であったとしても、少なくとも改憲のための国民投票にとっては、あの子たちのその票は、間違いなく「都合のいい票」になると、なってくれると、思われていたからこそ、「他国は、皆、そうしてる」みたいな上っ面のことばかりが声高に宣われつつ、選挙権は引き下げられたのだろう。そんな思いが、ズンズンと、私の中で膨らんでいく。(つづく)