ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1300

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と三十一

「ワカラナイトコロ ガ オモシロイ」

 今まで誰も踏み入ったことのない、ある新しいコトにチャレンジした町工場の社長さんの言葉。

 わからないトコロが面白い。

 最初からわかっていたら面白くない。

 たしかにおっしゃる通り。おっしゃる通りなのだけれど、私のような凡人にはハードルが高くて、なかなかそうは思えない。いつだって、すぐに、挫(クジ)けてしまいがちだ。ソレゆえ、たとえば、中学生の頃だったか、大の苦手であった数学の、その教科書の虎の巻のようなものをコッソリと買っては丸写し、みたいな、そんな、楽することばかりに明け暮れてきた人生であったような気がする。

 この年齢になって、ようやく、その社長さんの目から鱗の名言は、ほとんど抵抗もなくスルリと私の喉を通る。そして、その、わからないトコロが面白い、という「面白さ」も、どうにか理解できる。

 あ~、あの頃、あの社長さんと出会っていれば、チャレンジ精神旺盛な中学生になれていたかも。

 ん~、いや、あの頃の私には、目から鱗、ならぬ、豚に真珠、で、あっただろうな。折角の名言も、条件反射のようにアレルギー反応を起こして、はい、おしまい。そんな気がする。遠い遠い昔のコトだが、でも、やっぱり、後悔は残っている。

 わからないトコロが面白い。いい言葉だ。

 でも、この星の未来の「わからなさ」は、少し質が違うのではないだろうか。

 そう、質が違う。

 「ある町工場の社長さんの『わからないトコロが面白い』という言葉が、妙に忘れられなくて」

 「わからないトコロが面白い。わからないから、こそ、面白い。いいな、それ。気に入った」

 「でも、その『わからなさ』と、この星の未来の『わからなさ』とは、質が違うような気がして」 

 「この星の未来のわからなさ、ね~。たしかに、面白がってはおれないイヤな空気感はあるよな」

 「ソレです、そのイヤな空気感。不気味というか不吉というか」

 すると暫(シバラ)く間をおいて、Aくん。ネガティブからポジティブへと一気に舵を切るように・・・

 「Open up the future(オープンアップ、ザ、フューチャー)!」

 ん?

 「ソレでもやっぱり、その社長さんの言葉のように、未来なんかドウなるかわからないから面白い、で、なきゃ、ダメなんだろうな。で、ないと、生きている、生きていく、意味が、ない、とまでは言わないが、希薄になるような気がする」

 ん~。

 オープン、アップ、ザ、フューチャー、か~。

 そうかも、そうかもしれないな。

 わからないトコロが面白い。

 わからないから、わからないからこそ、面白い。

 オープン、アップ、ザ、フューチャー!

(つづく)