はしご酒(Aくんのアトリエ) その七百と二十九
「ゼゼヒヒ ト コウヘイムシ ト センダンヘンパ」
「大抵、人は正しいコトと正しくないコトの狭間で揺れ動いている」、とAくん。
おっしゃる通り、間違いなく揺れ動いている。なぜなら、完全無欠の人間なんて、まず、いないからだ。
「だから、ダレが、ではなく、ナニを、宣っているか、ドウ、行動しているか、が、重要だと思っている」
同感。
「私も、ドコの、ダレの、言動であろうと、その言動が素晴らしければ素直に受け入れなければ、と、思うように努めてはいます」
とはいえ、コレが、なかなか難しい。
「そういう意味で『是々非々』は、スタンスとして、好ましい」
是々非々?
あっ、そういえば、このアトリエに来る直前にも、Aくん、「是々非々」についてプチ問題提起されていたような。
「しかし、親戚筋の『是非非是』(ゼヒヒゼ)は、結構、厄介なんだよな」
ぜ、是非非是?
「正しいコトでも正しくないし、正しくないコトでも正しい、ですか」
「そう、そんな感じだ。そして、その負の進化系が『非是非是(ヒゼヒゼ)』」
ひ、非是非是(ヒゼヒゼ)?
「なんですか、それ」
「コッチとしてはソッチのソレは正しくないと思ってはいるけれど、ソッチがコッチのコレを正しいと思ってくれるならコッチもソッチのソレを正しいと思ってやってもいいぜ」
早口言葉か。
「本来は、コッチとかソッチとかなんてモノに囚われず、真に正しいコトを正しいと理解できる、受け入れられる、宣える、そんな自分であるべき。にもかかわらず、とくに、政治に関わるピーポーたちは、どうしても、駆け引きの、交渉の、戦略的ツールとして、この歪みまくった『非是非是』を使いたがる」
そう、そう、そうだった。交渉の、戦略的ツール。思い出した。
「僕はね、公平無私(コウヘイムシ)なくして是々非々なし。だと思っている」
公平無私、か~。
「まず、コッチを消し去る。すると、ソッチも消える。すると、ソコに残るのは、ナニモノにも囚われない広い視野。多角的な視点。フラットな視線。鋭い眼力だ」
ん~。
正論だし、その通りだとも思うけれど、ソレって、トンでもなく難易度が高い。私自身も、努めてはいるものの全く自信がない。けれど、あの人たちには、私たちのソレとは比較にならないほど大きな責任と義務があるのだ。それゆえ、Aくんが、そんなあの人たちに期待するのも当然と言えば当然、か。
「けっして好ましいコトではないし、最悪だとも思うけれど、あの世界に身を投じたピーポーたちが陥ってしまいがちな職業病と言えるのかもしれないな」
「職業病、ですか」
「そう。つまり、あの人たち的には避けて通れない、らしい、党利党略やら癒着やら利権やら、その他モロモロ、ナンやらカンやらに、ドップリと浸かり塗(マミ)れまくっているうちに、心ならずも、図らずも、ジワリジワリとその公平無私の真逆に鎮座する専断偏頗(センダンヘンパ)に取り憑かれ、ソコから脱することができなくなってしまう、ということだ」
専断偏頗に取り憑かれてしまう、か~。
「残念だし情けなくもなりますが、そんなあの人たちに、高難易度のソレを期待するのは、望むのは、さすがに、ちょっと、酷かもしれませんね」
(つづく)
追記
他国のコトにアレコレと口を挟むのはヤボ。とは思うけれど、ソレが、この星の未来に甚大な影響も責任もある超大国のコトとなると、気にしたくなくても気になってしまう。
ひょっとしたら、この星のそこかしこで垣間見られるトンでもない人権問題も、ココにきて一気に加速化、深刻化、し始めた感が歪めない温暖化問題も、亡きモノにされてしまうのではないか、という懸念が、払拭されないまま私の中に、ある。