ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1267

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と九十八

キャリートレード?」

 「ソレなりに安定感はあるが、突き抜けた商才めいたモノがないために全くもって生活が楽にならない、どころか、ジリジリと悪化の一途をもたらす、ウチの旦那、を、この際、とりあえず、信用し切れないトコロはあるものの、なんだか気が付けばカネ(金)を生み落としてくれるらしいお隣のご主人とトレード」

 ん?

 「そして、ある程度儲かったら元の鞘(サヤ)に、という手口。悲しいかな、その頃には、もう、元の鞘のウチの旦那はスッカリ弱り切ってしまっていたりするんだけどね」

 んん?

 「もちろん、邪道っちゃ~邪道なんだろうけれど、ま、このご時世、邪道もまた良しと居直って、社会的地位を獲得しつつあるのが、あの、『Carry Trade(キャリートレード)』。というのが僕の、僕なりの認識なんだが、ちょっと違うか、違うな、違うような気がする」、と、珍しく自信がデクレッシェンドな、Aくん。いずれにしろ、当然のごとく、私には、ナンのコトやらサッパリである。

 「キャリー、トレード、ですか」

 「そう、Carry Trade」

 いつもながら無駄に発音がいい。

 「トにもカクにもだ。国家間の金利格差をいいように利用して一儲け、という、姑息っちゃ~姑息な、もう一つの、トンでもanother(アナザー)『泡銭(アブクゼニ)バンザイ!』テクニック、らしいわけよ」

 一儲けのためなら夫婦交換も辞さない、邪道で姑息なトンでもテクニック、か~。

 申し訳ないが、やっぱり、ナンのコトやらサッパリ。ではあるけれど、素人は素人なりに、なんとなく、あまり好ましいテクニックではないんだろうなというコトぐらいはわかる。 

 大抵の場合、こうした国家間を股にかけたマネーゲームは、ダレかが、ナニかが、おそらく弱き者が、まず犠牲になる、被害を被る。そうした犠牲や被害の上にしか成り立たないようなグローバルなテクニックは、やはり、邪道であり姑息であると言わざるを得ない。(つづく)