はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と八十二
「アシッドアタック ト フェミサイド ト ミソジニー ト」
「そして、もう一つ。彼が、目から鱗の切れ味を見せてくれたのが『アシッドアタックとフェミサイドと、ミソジニー』」、と私。
「お~、トンでもなく恐ろしい英単語が立て続けに三つも。さすがに、ちょっと、背筋がゾワッとするよな」、とAくん。
「間違ってもこの国が、この悪しき三つが一体化した女性への攻撃を、ソレもまた致し方ない面もある、などと、許容してしまう土壌が微塵でもあるような国で、社会で、あってはいけない、と」
「言ってのけるわけだ、その彼は」
「そうです」
「まず、その根底に、ミソジニー、女性蔑視がドンと腰を下ろしている、か」
「下ろしていますね、間違いなく。で、圧倒的に男性よりも劣る、と、彼らが信じて止まない、女性が、たとえば、社会の中で目立つコトに、力を発揮するコトに、男性を、男性社会を、批判するコトに、嫌悪し、憤り、許せなくなり」
「フェミサイド、あるいは、アシッドアタック、酸攻撃、に、至る。か」
「そうです。ソレって、もう、男とか女とか以前に、人として、最低最悪。けっして許されるコトではないでしょ。違いますか」
押さえ切れない感情の昂(タカブ)りに、おもわず、怒りの闇に吸い込まれていきそうだ。
「微塵も違わない。レイシズム、人種差別、も、そうだが、差別は、差別意識は、人を狂わせる」
人を狂わせる、か~。
たしかに、たいていの場合、暴力のその背景には、差別が、あるような気がする。
「しかも、恐ろしいことに、当人は、狂っているコトに気付かない、気付けない。コレって、ホント、マジで厄介だよな」
気付けない、か~。
またまた、あの、正義を盾にした、正義を守るために正義の鉄槌を下す、と、いうヤツか。
人は、安易に正義正義と宣いがちだが、正義は、正真正銘の正義でなければ、トンでもなくダークな真逆の力を発揮してしまうのである。(つづく)