ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1240

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と七十一

「モノヅクリ リッコク!」

 それにしてもこの日本酒、美味いな。

 先ほどのコンニャクの刺身との相性もかなりのものだったが、この、炒めたコンニャクに田楽味噌を絡めた逸品との相性も、負けず劣らず素晴らしい。おそらく、山廃仕込みかと思う。その品のいい酸味との渾然一体感、あたかも、まるで、男とか女とかを軽やかに飛び越えた最高にお似合いのご夫婦のような、そんな絶妙なマリアージュなのである。ちょっと、わかりにくい例えだったかもしれないけれど。

 「いや~、いい酒ですね、これ。コンニャクたちとの相性も、とてもいい」

 「だろ。滋賀県の小さな酒蔵なんだけれど、米づくりからやっているらしいぜ」

 米づくりからの、滋賀の酒、か~。

 なんか無性に嬉しくなってくる。

 嬉しくなりついでに、そのコンニャクの三種盛りのラストの逸品も、一切れ。ベトナムの魚醤、ニョクマムを利かせたエスニック風か、いかにも辛そうな風情。

 ソレなりに注意して、覚悟して、ソレを口に放り込む。

 辛っ。

 ん~、たしかに辛い。

 慌ててグビリと。

 お、おっ。

 ブワッと辛味が旨味に変わり広がるこの感じ、いい。ホントにいい。

 あらためて、あらためて思う。

 日本酒にしてもコンニャクにしても、ナンにしてもカンにしても、この国は、やっぱりモノづくりなんだな、と。

 しかしながら、にもかかわらず、ナゼか、様々な分野で、とくに大手企業において、今まで築き上げてきた大切なモノを、その土台から、グラグラとグラつかせ始めつつあるような気がしてならないのである。

 万が一もこの危惧がファクト(fact )であったとしたら、モノづくり立国である、モノづくり立国であるべき、この国にとって、ソレは、マジで致命的と言えるかもしれない。

 是非、いま一度、初心に、モノづくりの原点に、立ち返ってほしい、と、心底、思う。(つづく)