はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と六十七
「サケグセ ガ ワルイ?」
酒をこよなく愛すこの僕が、こんな例え方をするのは本意ではないし、全くもって好ましいとも思わないのだけれど、と、前置きした上でAくん、また別の、巷を賑わしているあるコトについてユルリと語り始めたのである。
「ココに、酒呑み仲間の甲と乙がいたとしよう」
酒呑み仲間の、甲と乙?
「no alcohol, no life (ノーアルコール ノーライフ)」
ん?
「no sake, no life (ノーサケ ノーライフ) 」
んん?
「アルコールなくして人生なし。酒のない人生なんて考えられない。と、豪語するこの二人なのだけれど」
ん~。
「不幸にも、甲は、酒の量を超えると、滅法、酒癖が悪い」
申し訳ないが、話の先が全く読めない。
「手当たり次第に、絡む。詰(ナジ)る。罵(ノノシ)る」
なんと。
「ホラも吹くし、平気でウソもつく」
心底、嫌われるパターン。
「気持ちが大きくなってバカみたいにヤタラと奢(オゴ)りまくる」
あとでメチャクチャ後悔するヤツだ。
「挙げ句の果てに、酔った勢いで店内に置かれたモノをチョロまかす」
最悪。
「乙は、そんな甲に、僕も酒の量を制限するから、君も、酒の量を制限しろよ。と、幾度となく提言してきたわけ」
なるほど。
「にもかかわらず、甲は、聞く耳をもたず、同じコトを何度も何度も繰り返す」
重症だな。
呑み始めたらトコトン。に、どうしてもなりがちだから。適量なんかで、まず、止(ト)められない。
「でだ。乙は、考えに考えた末、清水の舞台から飛び降りたつもりで、決死の覚悟で、決意する」
むむ~?
「僕も酒を止(ヤ)めるから、君も、もう、止めようよ。とね」
な、なんと。
「もちろん、甲は、『no sake, no life。止めるわけにはいかない』と拒絶 」
な、なんて甲だ。
このままじゃ甲はダメになる、と、酒呑み仲間が決死の覚悟で提案してくれているというのに。
「ところがだ。決死の覚悟の提案であったはずなのに、乙は、その数日後に他の酒呑み仲間たちと、ワインセラーを巡る旅を計画していたんだよな~」
はい?
「決死の覚悟のわりには、どうせ受け入れてなんてもらえないだろうから、と、キッチリ、アルコール系の計画を立てていた。って、話。せめて、受け入れてもらえないということがハッキリするまでは計画なんて立てないでほしかった。そうでないと、せっかくのその『覚悟』、気迫、説得力、一気に白々しく薄まって、弱体化してしまうだろ。酒呑み仲間思いの乙には申し訳ないけれど、残念だ」
ん~、ん、あっ。
ひょっとして、ソレって、アレのことか。
「巷を賑わしている政治資金パーティーに絡む与野党間のあのグチャグチャ感、って、結局のところ、この甲と乙みたいな感じなんじゃないかって、思うわけよ、僕は」
あ~、やっぱり。
たしかに、なんだか少し残念な気がするし、呑み方がマズいからといって酒を止める、というのも、ちょっと筋が違うような気がする。
ナゼ、そんな気がするか。
おそらく、政治資金パーティーも、純粋な「応援」という、筋の通った真っ当なモノもあるはず。ソコのところをグチャグチャにして丸ごと葬り去ろうとするのは、あまりにも稚拙、短絡的。
「まさに、悪行が善行を駆逐する好例。オキテ破りのトンでもないバカのせいで、社会が、ドンドンと必要以上に厳しくなって住み辛くなる。よくあるコトだ」
(つづく)