はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と六十六
「ゲンゼイ ノ オンケイ?」
あたかも、トンでもなく無理くりな転調、移調のごとく、Aくん得意の唐突感で何気にスルリと話題をスイッチして、「ずっと抱いているモヤモヤなんだけどさ」、と、平然と語り続けるAくん。いつものコトながら、さすがに、そのノリに付いていくのはタイヘン。なのだけれど、ずっと抱いているというそのモヤモヤ、気にはなる。
「とくに選挙前とかになると、必ずと言っていいほど、あの人たちって、ヤレ、減税だ、ヤレ、クーポンだ、などと、得意満面に宣い出すだろ」
いわゆる、人気取り戦術、ってヤツだな。
「迫り来る、更なるオキテ破りの大増税そのものにメスを入れるのではなく、大増税はそのままで、チョロッと目眩(クラマ)しの飴、飴ちゃんをしゃぶらせる」
目眩ましの飴ちゃん、言い得て妙だな。
「恐ろしいのは、その飴ちゃんを、飴ちゃんの有り難さを、シモジモである君たちは、けっして忘れてはならんぞよ、という、お上のその姿勢だ」
飴ちゃんの有り難さを忘れてはならんぞよ、か~。
シモジモに頭を下げて選出されたあの人たちが、突然、シモジモに上から目線でエラそうに宣い出す。
なんか、ムカつく。
「そして、その姿勢が、現場に、どうでもいいような更なる業務を、雑用を、押し付けることになるわけだ」
ふ~。
しかしながら、たしかに、こういうのって、結構、あったりする。
思いつきなのかナンなのか、は、定かではないけれど、ワケのわからない雑用が上からバラバラと、バラバラと下(オ)りてくるのである。
「で、最上級権力者のあの言葉だ」
ん?
「給与や賞与の支払い時に減税の恩恵を国民に実感いただくことが重要だ」
ん、あっ。
「給与明細へ明記されるようにするとともに、集中的な広報などで発信を強める」
あ~、ア、アホかいな。
そもそも、一般ピーポーたちの納税義務に関してはメチャクチャ厳しいのに、そうして納められた血税の使い道に関してはメチャクチャ甘々まみれ。だというのに、その、選挙戦術としてのその場しのぎのチンケな「減税」もどきに、その恩恵を実感?、その実感を強要?、と、なると、さすがに温厚な一般ピーポーたちも、そりゃ、いい加減、キレてしまうだろう。
たとえば、あの、大納税立国として有名な北欧諸国。そんな北欧諸国を、この国の保険料なども含めた国民負担額は上回るのでは、と、囁かれ始めている。
と、なると、北欧のドコかの国のように、国民のほとんどが避暑地に別荘を、と、なるのか。いやいや、悲しいかな、そのようなコトには絶対にならない。
この違いは、この差は、この、如何ともし難い「負担損」感は、いったい、ドコからやって来るのか。
ソコに、ナニかトンでもない血税の使われ方があるのでは、と、どうしても勘繰ってしまう。
そんな疑念が払拭されない中での、この、最上級権力者の言葉である。ナニがナンでも応援団の方々は別として、ほとんどの一般ピーポーたちが、「エラそうに、ナニ言ってんだ、バカヤロ~」とボヤきたくなるのも頷(ウナズ)ける。(つづく)