ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.992

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と二十三

「アニマルウェルフェア!」

 ある国の常識が、他の国では非常識だということがある、と、ユルリと語り始めたAくん。プロローグは緩やかなれど、このあと、ジワジワとヒートアップしていきそうな気配だ。

 「それぞれの国の歴史やら風土やら宗教やら、そして、ソレに伴う価値観やらの違いから、ナニが常識で非常識なのか、が、国単位で違ってくることもまた致し方なしかな、と、思いはする。思いはするが、そのもう一方で、ソコは絶対に違っちゃダメだろ、ソッチの常識は、もちろんコッチの常識でもあるはずだろ、って、思うこともあったりするものだから、どうしてもヤヤこしくなってくるんだよな~」

 やはり、ジワジワとヒートアップしてきた。

 でも、その、国境を挟んだ常識と非常識というヤツ。私も、以前から、少し、気になってはいる。

 「そんな、ソッチでもコッチでも常識だろ、の中で、この頃、とくに、僕が気になっているのが、アニマルウェルフェア」

 ん?

 「ア、アニマル、ウェルフェア、ですか」

 「そう、アニマルウェルフェア。アニマルたちのウェルフェアね」

 「ウェルフェア・・・、福祉?、福利?」

 「そうそう、動物たちの福祉、福利。どちらかというと福利、かな。中でも家畜。この国の、家畜たちに対する意識が、なかなか世界の常識に追い付けない」

 家畜に対する、意識?

 「国民全体の所得が、何年も低調なままであるだけに、そう簡単には価格を上げるわけにはいかない。だけに、どうしても、アニマルウェルフェアなんぞに構ってられない、というコトになってしまうのだろうけれど」

 構ってられない、か~。

 「だから、ソレにユエに、トにもカクにも合理化。ナニがナンでも生産性。な、わけだ。現場のそうしたキツキツな思い、わからなくはない」

 「だけど、このままでは、世界の中で取り残されてしまうかもしれない、ってことですよね」

 「そう、そういうこと。どうせ食肉にするんだから、どうでもいいだろ、そんなコト。ということには、残念ながら、絶対にならない」

 食肉になることが宿命の、家畜たちの福利とは、いったい・・・。

 「ペットも、人間も、そして家畜も、その日その日を生きているんだよな。生きているその時その時を、みんな、気持ちよく生きたい、生きていたい、ってコト」

 みんな、気持ちよく生きていたい、か~。

 ん~・・・、当たり前のコトかもしれない。いや、そんなコト、当たり前のコト以外のナニモノでもない。だって、みんな、生きているのだから。

 「ソコで考え出されたのが、5つの自由」

 「5つの、自由、ですか」

 「そう。飢えやら苦痛やらナンやらカンやらから解放された、自由。この自由があってこそ、ストレスなく、気持ちよく生きていられる、というわけだ」

 5つの自由、か~。

 「中でも、僕が、一番のキモだと思うのは、本来の行動がとれる自由。自分自身の行動、ナニモノにも規制されない自由な言動。コレだよ、コレ」

 なるほど、なるほどな~。

 先ほどの、つい最近引退されたあの彼女も、彼女自身の行動、ナニモノにも規制されない自由な言動、で、できることならこのままずっと、ブイブイと突き進んで行ってほしいな。(つづく)