ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.976

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と七

「ユルセナイ ガ イビツ」

 ほとんど的(マト)を射た内容の発言であったとしても、たった一つの不注意な未確認情報を電波に乗せてしまったがために、その発言全体が、どころか、その発信者の存在さえも全否定、みたいな、そんな憂き目に遭う。ということがあったりするから、とかくこの世は住みにくい。とくに、圧倒的な権力に対して、そうしたスキを一瞬でも見せれば、たちまち標的となる。炎上。火だるま。火焔地獄。場合によっては息の根すら止められてしまいかねない。それゆえ、常に、心してかからねばならないわけよ、とAくん、一気に捲し立てる。おそらく、余ほど引っ掛かるナニかがあったのだろう。

 たった一つの不注意な未確認情報・・・、か~。

 「しかし、あれだけ素人っぽいコメンテーターたちがアレコレ語りまくっているわけでしょ。テレビなんて、そもそもその程度のモノなんじゃないのですか」、と私。

 「その通り。その程度のモノだと思っておいた方が無難。だけど、圧倒的な権力に対してモノ申した場合は、そうは問屋が卸さない、わけ」、とAくん。なんとなくキナ臭さを帯びてくる。

 たしかに、圧倒的な権力を握るピーポーたちが、いくらウソを垂れ流しても、総じてスルリと逃げ切ってしまう。そう簡単には認めないし、謝らないし、責任も取らない。

 「許せない、が、歪(イビツ)!」

 ん?

 「つまり、許せない、が、モロモロのために一貫性を欠き、歪だということだ」

 んん?

 「そもそもが公平ではない。誰が誰に対する不注意な未確認情報であったのか、が、大きく意味をもってくるわけだ」

 同じミステイクであったとしても、その、誰が誰に、で、許せるとか許せないとかが決まってしまう、ということか。

 「一般ピーポーであろうとも、テレビでモノ申せば影響力が大きい、などと攻撃されがちだが、影響力の大きさなら権力者たちだって負けちゃ~いないだろ。でも、たいていはウヤムヤだ。政治の世界も経済界も、圧倒的な権力者たちってのは、実に上手い具合に煙に巻く。あ~、考えれば考えるほど、とかくこの世は住みにくいよな~」

 ん~。

 夏目漱石には申し訳ないけれど、ソコしか存じ上げない『草枕』のオープニングのその一節が、なぜか、あたかもお経かナニかのようにユルユルとドコからともなく聞こえてくる。

 

 智に~働けば~角が~立つ~

 情に~棹(サオ)させば~流され~る~

 意地を~通せ~ば~窮屈だ~

 兎角この世は~住み~に~く~い~

 

(つづく)