ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.892

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と二十三

「スラップ! スラップ! スラップ!」

 先ほども話題になった悪魔の訴訟、「スラップ」!。そのスラップについて、なんだかエラそうに語らせてもらったけれど、正直、僕なんかが、スラップと聞いて反射的に頭に浮かぶモノといったら、ラリー・グラハムやレベル42のマーク・キングといったベーシストたちの、指で激しく叩く、あの、スラップ奏法のことぐらいで、実は、つい最近まで、スラップ訴訟のことなど、全くもって微塵も知らなかったわけよ、と、ちょっとしたカミングアウトをしてみせる、Aくん。

 「そ、そうなんですか」

 「そう、そういうこと。で、そのスラップ奏法、チョッパー奏法とも言われていて、つまり、チョップ、チョップね。ほら、ジャイアント馬場ジャイアントチョップ。あの空手チョップみたいなヤツを弱者に喰らわす、のが、スラップ訴訟なんだろ、と、マジで思っていたんだよな」

 なぜか、聞けば聞くほど間違ってはいないような気がしてくる。

 「当たらずとも遠からず。のように思えますが」

 「そうかい。そう言ってもらえると嬉しいけれど」

 「圧倒的な弱者による圧倒的な強者への批判、糾弾、が、ナンの躊躇もなく、誹謗中傷、名誉毀損ということで、訴えられることになってしまえば、世界中の独裁者たちにとっても願ったり叶ったり、これほど都合のいいことはないわけでしょ。更に一層ガンガンと、その権力を集中し、パワーアップしていくことができる、ということになりますよね」

 「なる、なるね、間違いなく。訴えられることで、おそらく、たいていの一般ピーポーは、その翼をもがれるだろうしな」

 翼をもがれる、か~。

 失うものが大きすぎて、ギブアップしてしまうのが普通なのかもしれない。だから、恫喝(ドウカツ)訴訟とか威圧的訴訟などと言われたりもするのだろう。

 「そんなスラップ訴訟の致命的な問題点がわからない、わかろうともしない、権力大好きピーポーたちが、エラそうにジワジワと増殖しつつあることに、警鐘でもナンでも鳴らせるものは全て鳴らしたくなってくるよな~」

 警鐘、か~。

 きっと、その警鐘は、ゴ~ン、ゴ~ン、ゴ~ン、ではなく、スラ~ップ、スラ~ップ、スラ~ップ、と、おどろおどろしく鳴り響くに違いない。(つづく)