はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と八十七
「キノツクエ ノ メダカノガッコウ」
♪め~だ~か~のがっこ~は~
かっわっの~なか~
そ~っとのぞいてみてごらん
そ~っとのぞいてみてごらん
みんなでおゆうぎ
しているよ~
「はい!?」
ナニを思ったのか、Aくん、またまた唐突に歌い出したものだから、またまたザワザワと動揺してしまう。
「めだかの学校、知らない?」
「も、もちろん、知ってはいますけど」
「なんかいいんだよな~、のどかで」
のどかで、か~。
「つまりだ、つまるところ大切なのは、やっぱり、環境だ、ってコトだよな」
「か、環境、ですか」
「そう、環境。慌(アワ)てない、慌てない、ユルやかな川の流れ。キレイな水。それでいて豊富な栄養分。充分な酸素。そして、優しい先生。愉快な仲間。楽しい授業。ほら、ソコに、学校の理想形があるような気がしないかい」
そう言われると、たしかに、そんな気がしてくる。
「教育関連のエライさんたちも、ウダウダと、ゴチャゴチャと、難しいコトばかり言わないで、シンプルに、『めざせ、めだかの学校!』と、宣言すればいいんだよな」
ホントだ。
意味、不明の「道徳」やら、目的、不明の「株式投資ゲーム」やら、そして、世界の平和に繋がるような真っ当な正義、不明の「愛国心教育」やらから、もういい加減、足を洗ってもいいのではないか、と、マジに思ったりする。
「そんな、『めだかの学校』の可能性を感じさせてくれる学校が、ある地方の山の中に、ある、らしい」
「山の中に、ですか」
「そう、らしい。めだかの学校が、やっまっの~なか~、に、というわけだ」
「ほ~、なんとなく期待してしまいますよね」
「そう、その通り、期待してしまう。たとえば、地場産業である林業やら木工やらとのコラボ、『マイデスク』づくり」
「マイデスク、づくり、ですか」
「組み立てキットになっているオール地元の木製の机を、まず、自分で製作するコトから、長きに渡る学校生活の、その第一歩がスタートする」
「いいじゃないですか、それ」
「正真正銘の自分の机、マイデスクなわけだ」
「卒業したら?」
「もちろん、もち帰る!」
「もちろん、もち帰る?」
「マイデスクが、そのまま卒業記念品となるわけだ」
「いい、いいです、それ、ホントにいい」
「校舎にも地元の木材がフンダンに使われている、理想的な小中一貫校みたいなんだな」
お金も夢も理想も注ぎ込まれないまま、の、とりあえずの校舎づくり、学校づくり、が、ほとんどなだけに、なんだか私まで嬉しくなってくる。
するとAくん、そんな私に、あたかも冷や水を浴びせるかのように、「でもね、言ってくるわけよ。たいていは、上の方から、ウダウダと、ゴチャゴチャと」、と。
なんと~。
ホンワカと、温まりつつあった私の身体は、無慈悲にも、一気に冷やされてしまったような気がした。
だが、だがしかし、それでもやっぱりココは、現場の先生方に期待しよう。そして、目一杯、心からエールを送ることにしよう。
山の中の、めだかの学校。
木の机の、めだかの学校。
私一人が、人知れず応援したところでナンの足しにもならないだろうけれど、新しい学校のあるべき姿を、その「めだかの学校」が、ひょっとしたら、私たちに、見せてくれるかもしれないから。(つづく)