ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.805

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と三十六

「ゲイジュツ ト ケンリョク トノアイダ ノ ソーシャルディスタンス」

 ナニやら巷では、ソーシャルディスタンス、ソーシャルディスタンス、と、随分と賑やかだが、このソーシャルディスタンス、芸術と権力との間においても、というか、芸術と権力との間においてこそ、賑やか過ぎるほど、うるさすぎるほど、その必要性が問われなければならない、ってコトを、けっして忘れるべきではない、と、語気を強めつつ話し始めた、Aくん。そういえばAくんは、芸術の、芸術家の、ナニモノにも組み込まれない、呑み込まれない、自主自立の重要性と、その実現の難しさを、かねてから訴え続けている。

 「巨大な権力をナメてかかるとエラい目に遭う、ということだ。たいていは、最初のうちは、巨大な権力ごとき、上手い具合に手玉に取って、コチラのやりたいようにやらせてもらうぜ、ぐらいの威勢の良さ満々なのだけれど、どうしてどうして、そうは問屋が卸さない。むしろ、ジワリジワリと巨大な権力にとって都合のいいように、クルンクルンに丸め込まれていくのがオチ、な、ワケよ」

 なるほど、クルンクルンに、か~。たしかにその感じ、時折、目にするような気がする。ソレが、無意識の忖度なのか、意図的な配慮なのか、それとも、金(カネ)の力にモノを言わせた圧力に対する屈服なのか、と、いった、そのあたりの真相は、残念ながらナゾのベールに包まれたままなのだけれど、なんにせよ、ソコにあるべき芸術の魂が、ゴソッと抜かれてしまうことがある、ということなのだろう。

 するとAくん、ユルリと、それでいて力強く、結論付ける。

 「先ほどから何度も言わせてもらっているが」

 ん?

 「とは言うものの、古典芸能も含めた芸術のアレもコレもが、金銭的に厳しいというのもまた現実。だからこそ、権力も血税も握るシモジモじゃないエライ人たちに、あえて、あえて言っておきたいコトがある」

 ん、んん?

 「金(カネ)は出しても口(クチ)出すな!」

(つづく)