ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.783

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と十四

「ムヨウノスケ?」①

 悲しいかな、あの『ゴルゴ13』の影に完全に隠れてしまっている『無用ノ介』ではあるけれど、僕の中では、さいとう・たかお史上No.1、なんだよね、と、ようやく一休みを終えたAくんが、口火を切る。

 ん?、む、むよう?、のすけ?、それ、ナニ?

 そんな、?(ハテナマーク)まみれの私を尻目にAくんは、同じ頃に、ライバルの週刊漫画雑誌で連載されていた石森章太郎の『佐武と市捕物控』とが、屈指の双璧であったと振り返る。

 さ?、さ、さぶと?、いちと?、とりもの、ひかえ? 

 「漫画の世界でも、あの頃、時代劇は光り輝いていた、ということだ」、と、Aくん、シミジミと。

 そういえば、高校生の頃だったか、「無意味の意味」というワードが、ちょっとしたブームになったことがある。

 結局、その意味は、理解できないまま現在に至っているのだけれど、ただナンとなく、この今でも、無意味を頭ごなしに無意味だと思ってはいけない、という思いが私の中にはある。そんな私の中で、「無意味」と「無用」とが、シンクロしながらネチャッと重なるように交差する。

 「むようのすけ、の、無用、は、無意味、だということですか」

 「難しいことを言ってくれるよな~」

 「漠然とですけど、似ているかも、と、思ったものですから」

 「無用、と、無意味、ね~」

 と、呟きながらAくんは、またまた奥へと姿を消したかと思うと、赤色のポリタンクと共に舞い戻ってくる。そして、しばらく、そのままにしておいた灯油切れのストーブに、あの、シュポシュポで、灯油を投入する。

 わっ、シュポシュポだ。

 ナン十年ぶりの再会だろ、久しく目にしてなかったな~、間違いなく絶滅危惧種だな、などと、おもわず思ったりする。(つづく)