ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.755

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と九十六

「ユメ ノ リニアモーターカー

 「夢のリニアモーターカー!」

 「はい?」

 「まさに大人の電車ごっこ、夢のリニアモーターカー、知らない?」

 お、大人の電車ごっこ

 さすがに、リニアモーターカーは、完全にノーマーク。それゆえに、猛スピードで頭の中を整理しようと試みる。

 「知ってはいますが」

 「興味はない?」

 「とは言いませんが、別に、私にとっては夢じゃないし」

 「おっ、興味深いことを言ってくれるよな~。夢じゃ、ない、し、と、きましたか」

 気を悪くしたのでは、と、一瞬、思いはしたけれど、実際、夢じゃないんだから、ま、いいか~、と、酔いの力も借りて、居直ってみせる。

 「あまりにも長い年月を掛けての事業であったがために、当時の夢が現代の夢ではなくなった、ということは、大いにあり得ることだからな」

 「というか、そもそも、私は、電車に速さなんて求めていないんです」

 「いいね~。速さ、イコール、夢、じゃない、と」

 「そうです、イコールじゃない。今日も元気に観光も仕事も日帰りで、などという、安易なキャッチコピーまで出てきたりするでしょ、きっと」

 「出てきたりするだろうな。でも、時間的距離がグッと縮まるわけだから、地方にとってもプラスなんじゃないの」

 「全否定はしません。しませんけれど、私は、旅は、ソコに泊まって、ナンボ、泊まってこそ、旅、だと思っていますから」

 「そうか~。そう言われるとたしかに、経済効果からしても、ユッタリ泊まって、ノンビリ温泉にでも浸かって、そして、そこかしこをプラプラしつつ、タラフク旨いものを食らう、でないとな、という気はする。でも、出張なんかは、日帰りの方がメリットは大きいんじゃない?」

 「昔はそうだったかもしれませんけど」

 「昔は?」

 「もちろん例外はあるのでしょうけど、出張なんて、もう今は、ほとんどの場合、リモートで充分だと思いますが」

 「なるほど~。時は流れて、いつのまにか、リニアモーターカーは、リモートデモイイカー、に、なりにけり。ってことだな」

 うわっ、う、うまい!

 なんともかんとも、おあとがよろしいようで。(つづく)