ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.732

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と七十三

「カツヤク カツヨウ リヨウ」

 少し前まで、権力を握るシモジモじゃないエライ人たちが、口を揃えて、「一億総活躍社会、女性も高齢者も外国人もひっくるめて、宜しくお願いしますよ~」みたいな、そんな手前勝手な調子の良いことを、いけしゃあしゃあと宣っていた、にもかかわらず、ちょっと、想定外のトンでもないことが起こったりしてしまうと、アッというまに巷には、もう明日からはいいから、などと、軽くあしらわれてしまう人たちで溢れかえってしまう、とAくん。

 一億総活躍社会、か~。

 その、わかりやすそうでいて、実は、わかりにくい言葉は、たしかに、それなりに地位を獲得していた。少なくともそう見えてはいた。しかし、多くの一般ピーポーがナンとなく疑念を抱いていたように、トンでもないことごときで、アッというまに崩れ去るモロさもまた、もち合わせていたのである。

 「僕はね、活躍と、活用と、利用とは、その根っこの部分からして、全く違うものだと思っている」

 「活躍、と、活用、と、利用、とは、ですか」

 「そう。つまり、一億総活用社会は、活躍ではなく、残念ながら、活用でもなく、悲しいかな、どこからどう見ても、利用にしか見えない、利用としか思えない、ということだ」、と、失望と憤りとが交差するかのようにな表情で語る、Aくん。

 「まさに、コマですね、コマ」

 「そうだな。コマ、と、考えたほうがわかりやすいかもしれない」

 人を人としてではなく、上手い具合に都合よく、使える、利用できる、そんなコマとして、扱う・・・とは。

 「しかし、そんな嘗(ナ)めたマネをしていたら、いつの日かきっとシッペ返しを喰らう。コマたちの大逆襲、近いうちに、間違いなく、ある!」

(つづく)