はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と六十三
「シュウキョウ ト タブー ト ハッショウドウ」②
「たしかに、タブー視されてますよね。そう簡単には、日常会話の中で、宗教の話なんてできそうにないし」、と私。
「宗教と政治とプロ野球の話題は、ご法度、と、いうことだな」、とAくん。
宗教と政治とプロ野球の話題、か~。
なるほど、あらためてそう言われると、たしかにそうかもしれない。
宗教も政治もプロ野球も、平和を希求するモノであるはずなのに、逆に、その話題を出すことが、関係性をキナ臭くザワつかせてしまうとは、なんと皮肉なことだろう。
「でもね、八正道(ハッショウドウ)だけは、トンでもないことにマミれにマミれた時代であればあるほど、公教育の中に入れ込んでいいんじゃないのか、という気がするんだよな~」、とAくん。
「は、はっしょうどう、ですか」
初めて耳にする言葉だ。
「ナンなのですか、その、はっしょうどう、って」
その漢字すら思い付かない。
「八つの正しき道。ブッダが思うところの、考え方の究極のカタチなんだろうけれど、まさに、宗教という枠を越えた哲学そのものだ、と、僕なんかは思っている」
八つの正しき道、とは。
「正しき、などと言ってしまうと、たいていは、誰がソレを正しいと決めたんだ、胡散臭いな、みたいなことになってしまうんだけどね。でも、正しき道のその正しきは、そんな上から目線の、押し付けがましいものとは違う」
「違うのですか」
「違う、全くもって、違うね」
ん~、なるほど。
仮に、そんな上から目線の「正しきコトだから信じなさい、信じなければ救われませんよ」みたいなものであったとしたら、言われた途端に、ソコに、ナンとなく脅迫めいた胡散臭さを、感じてしまうだろうな、きっと。(つづく)