はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と十五
「サイバン サイアクバン サイゼンバン」②
そんな私の思いを、直球で、Aくんのキャッチャーミットに投げ込んでみる。
「とくに、国などが絡んだ訴訟系の裁判での判決が、裁判官によってコロコロと変わる、ということを、幾度となく目の当たりにすると、どうしても、そんないい加減なものでいいのか、って、思ってしまいがちなのですが」
内角低めに構えられていたキャッチャーミットが、低く重い音を立てる。
「裁判なんて、ソンなものだろ」
またまた期待しすぎなのか。
シモジモじゃないエライ人たちなのだから、きっと、パーフェクトなジャッジをしてくれるもの、と、勝手に思い込んでいるだけなのかもしれない。
でも、それでもやはり、私の中のモヤモヤは晴れないままだ。
するとAくん、私の胸の辺りにズバンと、私が投げ込んだボールを投げ返してくる。
「そもそも、裁悪判、でも、裁善判、でもなく、漠然と、裁判(サ、イ、バ、ン)だからな~。自信があるなら、覚悟をもって、裁善判(サ、イ、ゼ、ン、バ、ン)、と、言い切れよ、って話だろ、違うかい」
裁善判、か~。
裁善判。いいな、いい、こっちのほうが断然いい。それどころか、こっちでないと、ダメな気がする。(つづく)