はしご酒(Aくんのアトリエ) その九十
「ベンドクタイショウ」①
「その、便内読書部門で、燦然と光輝いた今年上半期の『便読大賞』が、コレ」、と、手渡されたもう一冊の本の向こう側に、どうだ!、と、言わんばかりのキュートなドヤ顔がのぞいている。
とはいえ、たとえどれほどキュートなドヤ顔で、便読大賞などと言われたとしても、そう易々と、「ほ~、そうなのですか」と納得することができないトコロが私のイヤなトコロであるわけで、それはそれとして反省しなければならないトコロ、とは、思っている。
たしかに、その、気持ちいい紙の風合いを際立たせた装丁は、読み手の好奇心を刺激する。
「触れた感じがイイですね」
「だろ。ほとんど自主出版に近い感じなだけに、著者の思い入れがストレートに反映しているのかもな」
ペラリペラリとベージをめくる。
まえがき、か。
まえがきなど、滅多に読まない。本編に感動して、読後にその勢いで、ということもないわけじゃないけれど、そんなことはそうあることではない。
にもかかわらず、なぜか妙に気になって、おもわず、そのまえがきを読み始める。(つづく)