ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.630

はしご酒(Aくんのアトリエ) その七十一

「ヘンケン ヤ ムシ サマザマナ ジンケンシンガイ」

 語り疲れたのか、Aくん、やにわに奥へ、と、姿を消す。

 手もち無沙汰で、ナニ気に周りを見渡していると、小さな本棚のようなところにスコンと置かれた一冊の本が目に入る。

 どうやら、アジアや南アメリカなどで逞(タクマ)しく生きる先住民たちの写真集であるようだ。

 その写真集の装丁(ソウテイ)が、あまりにもステキであったので、心ときめき、パラパラとページをめくってみる。その、キラキラとした写真たちに、スッカリ見入ってしまった私は、その写真集の中の、遥か遠く離れた先住民たちに思いを馳せる。

 私は思うのである。

 この星のそこかしこには、圧倒的に弱い立場である先住民たちがいる。

 独自の文化や宗教、習慣。ソコには、大切にされなければならない、尊重されなければならない、濃厚な価値観が、毅然と存在する。にもかかわらず、その価値観を巨大な力が根こそぎ一掃しようとしてきた、というこの事実は、そのまま、この星の、開発と発展の歴史と言い換えられるようにも思える。

 あるドキュメンタリー番組での、先住民である一人の女性の、「偏見や無視、様々な人権侵害」という言葉のその重たさを、私たちは、もう一度、シッカリと受け止め、噛み締めるる必要がありそうだ。

 歪んだ正義の名の下(モト)に、強者が弱者を駆逐するという構図が、この地球という、神が与え賜うた青き奇跡の星の、スタンダードになってはいけないのである。(つづく)