ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.627

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六十八

「エークン ユメヲミル ユメヲカタル」⑥

 「おじいちゃ~ん、お客さん。ほ~い、ブオッホ。よろしくね、おじいちゃん。任せておけい、ブオッホ。ま、ま、ま、マジかよ、よろしくね、おじいちゃん、だと~。おじいちゃんは、元アリタリア航空の敏腕パイロットですから、大丈夫ですよ、ご心配なく。アリタリアか~、若い頃に乗ったアリタリアの小振りの飛行機の操縦室のそのドアが、飛行中ず~っと開いたままだったからな~、ま、操縦室のドコまでもイタリアンで和やかな雰囲気がコチラまで伝わってきて、それはそれで良かったのだけれど、なんとなく複雑ではある。バラバラバラバラ・・・。到底、湧き上がる不安感を払拭できそうにないプロペラの回転音が、あたりに響き渡る。お客さん、ブオッホ、あなたの水上機セスナ、愛の仕事人スピードキングへようこそ、ブオッホ」

 ん~ん~ん~。

 待ってました、怪しい老人。Aくんの夢に、キュートな娘さんは似合わない。

 「スカイランデブーなひとときをお楽しみくださいね、行ってらっしゃ~い。バラバラバラバラが1000倍ぐらいに激しくなったと思った途端に、アッと言う間にそのキュートな娘さんもプレハブ小屋も見えなくなってしまった。スカイランデブーなひとときを、だと~、ナニが、ドコが、スカイランデブーなんだ。しかも、老パイロットの、マナーもヘチマもあったもんじゃないくわえタバコのその煙が、煙くて煙くて。あまりに煙いので、手動のハンドルをグルリグルリと回して、ほんの少しだけ窓を開ける。その隙間から機内に飛び込んできた大空の風は、下界のソレよりもウンとキリリと爽やかで、一瞬にしてタバコの煙まみれの機内を浄化してくれた」

(つづく)