はしご酒(Aくんのアトリエ) その五十六
「タスケル ト スクウ」③
「霊的なモノが宿るとされていた獣の皮を使ったスピリチュアルな儀式こそが、この、救、であった、みたいなんだよね」
スピリチュアルな、儀式。
救いを求めた祈祷にも似た、儀式。
少し、見えてきたような気がする。
「僕が思う、救う、の、イメージは、金魚掬(スク)いの、掬う、に、近い」
金魚すくい、の、すくう?。どんな漢字だったっけ、全く思い出せない。
「最大多数の最大幸福から漏れ落ちた圧倒的な弱者たちを、両手でそっと掬い上げる、そんなイメージだ」
切羽(セッパ)詰まって、もうアトがない、命そのものがかかっているんだ、ということなのだろう。それゆえの、「救」なのかもしれない。だから、「救急救命」なのであって「助急助命」とは言わないのか、だから、国は、「公助」とは言うが「公救」とは言わないのか、だから・・・などと、アレやコレやと思考が頭の中を駆け巡る。
「もちろん、農具も大切で、それによって一時的に助かる人も数多くおられるだろうとは思うが、とりあえず農具を与えてソレで終わり、では、ダメだと思う」
Aくん独特の言い回しだけれど、なんとなく、わかるような気がする。
「その根底に、救う、という強い気持ちがなければ、切羽詰まった弱者たちの命を掬うことなんて、救うことなんて、できるわけがない」
その通りだと思う。
「そうでなければ、この国の、この星の、現在も、未来も、あまりにも暗く重い、と、思うんだよな~、僕は」
(つづく)