ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.597

はしご酒(Aくんのアトリエ) その三十八

「アルトキ~、ナイトキ~」②

 助け舟を求めたというわけでもないのだけれど、ふと、Aくんの方に目をやる。

 ドコからか、小さな画集のようなものをもち出してきたらしく、おもむろに、ペラリペラリと頁(ページ)をめくりながら眺めている。

 誰の画集なのかが気になって、「誰の画集なのですか」、と、尋ねてみる。

 するとAくん、「あ~、コレね。デヴィッド・ホックニー(David Hockney)のブルーギター(The Blue Guitar)という、スーパー絵本だ」、と。

 「スーパー絵本、ですか」

 「そう、スーパー絵本。この本のコンセプトからしても、そこいらの画集というヤツとは一線を画している」

 少しいいですか、と、その本を手に取った私は、Aくんと同じようにペラリペラリと頁をめくってみる。

 開いた左の頁には、詩のようなものがあり、その右側の頁には、おそらく、そのホックニーとかいう画家の、青色と朱色をメインにしたエッチングっぽい絵たちが、めくるごとにキラリキラリとある。

 「好きなんだよ、この本が。ザラリとした温かいテクスチャーもいいだろ」、と、その言葉のまんまの表情で語る、Aくん。

 「画集ではなくスーパー絵本なんだ、と、わざわざ宣われるその意味が、なんとなくわかるような気がします」、と、すっかり納得の、私。

 全くもって仰々しくなくて、ザラリとしていながらサラリとした、そんな軽やかさが漂う、こんなステキな絵本が、あったりするんだな~、という思いが、ジンワリと、ジンワリと、私が迷い込んだ迷宮の、その、さらに深いところから滲み湧き上がってくるのが、わかる。(つづく)