ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.582

はしご酒(Aくんのアトリエ) そのニ十三

「アナタニイワレタクナイ」②

 するとAくん、「たとえば、覆面コメンテーター、なんて、どうだろう」、と。

 「覆面コメンテーター、ですか」

 「そう。大ざっぱな肩書き以外は素性を明かさない覆面コメンテーター」

 「その謎のベールに包まれた覆面コメンテーターが、TVやネットや誌面で語るわけですか」

 バカバカしい。

 Aくんには申し訳ないが、一瞬、そう思う。けれど、よくよく考えてみると、それもアリか、とも、思えてくるから不思議だ。

 「あなたに言われたくない、やら、アンタにソレを語る資格はない、やら、おまえが言うな、やら、から、ひょっとしたら解放されるかもしれないだろ」、と、Aくん。

 解放されるかもしれない、か~・・・。

 もし、解放されなかったとしたらどうなるのだろう、と、暫し考えてみる。

 どうなるのだろう

 どうなるのだろう

 解放されなかったらどうなるのだろう

 「解放されなかったらどうなるのだろう」

 「あなたに言われたくない、の、連鎖、だろうな」

 「えっ!?」

 いつのまにか、私の口からは漏れ出てしまっていたようだ。

 「所詮、人間なんて、多かれ少なかれ、叩けばホコリの出るカラダだろ。あなたに言われたくないなどと言われないほどの人間なんて、そうそういるもんじゃない。たいていは、感情的に、お互いに、あなたに言われたくない、と言い合って、罵(ノノシ)り合って、それで終わりだ」

 そんなAくんの、「あなたに言われたくないの連鎖」理論に耳を傾けているうちに、ふと、お坊さんたちに、かなり失礼で乱暴な、ある諺(コトワザ)が頭に浮かぶ。

 

 坊主憎けりゃ袈裟(ケサ)まで憎い

 

 ソコから滲み出てくるものは、ソコにあるものは、嫌悪、憎悪、怒り、見下し、蔑(サゲス)み、差別、・・・。

 「仮に、万が一、億が一、たとえ坊主が憎くても、いい袈裟は、いい!」

(つづく)