はしご酒(Aくんのアトリエ) そのニ十
「シリタクナイノ」②
黙りこくるAくんを尻目に、一旦、開いてしまった私の口からは、脈絡など気にすることなく怒濤の勢いで、アレやコレやと飛び出して、おいそれとは抑えることなどできそうにない。
「誰しもが、そんな愚行の全貌やら真相やらに興味があるわけじゃない。さらに言わせてもらうなら、自分にとって都合が良ければ、少々のことは目を瞑(ツム)る。それどころか、自分にとって都合のいい存在のその愚行ごときに目くじらを立てて、ネチャネチャと突(ツツ)こうとする者たちを、ことのほか敵対視し、例のあの、いちゃもん、を、つけてつけてつけまくる」、と、思い付くがまま、珍しく、なぜか調子に乗って、押せ押せモードの私。さすがに、少し息が切れる。
その一方でAくんは、我が道を行くが如く、冷めても美味い、のは、やはり、溢れ出るほどの出汁を、卵の中にギュギュッと閉じ込めているからなんだろうな~、などと、女将さんのだし巻き卵を頬張りつつ、満足気に独り言(ゴ)ちている。(つづく)