ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.555

はしご酒(4軒目) その百と百と九十六

「ゲイジュツ ニ クビワ モンダイ」

 「実際、権力が、芸術を守れるのか、守るべきなのか、守ることによるリスクはないのか、といったことは、それはそれで、また別の問題として、あるにはある、よな~」、などと、Aくんが、やたらと回りくどく、想定外の突っ込みを入れてきたものだから、少々、動揺する。

 「芸術を守る!、という、その姿勢、その気概、は、賞賛に値するし、感動的ですらあるのだけれど」、と、それなりに評価はしているようではあるが、はたして、Aくんの、その突っ込みの真意は如何なるものなのか、動揺しつつも興味もまた、湧いてくる。

 「権力を握るシモジモじゃないエライ人たちが、決して口にするべきではない、目一杯、上から目線の、野暮で、お門(カド)違いな言葉ってのがある」、とAくん。

 「や、野暮で、お門違いな言葉、ですか」、と私。

 「たとえば・・・」

 「たとえば?」

 「たとえば、公のお金を投入するのだから、国民の意に沿わないものは控えていただきたい、みたいな、その手の圧力だな」

 「国家の意に、と、言いたいところを、あえて、国民の、と、言うところあたりが、なんだか、姑息で、いやらしいですね」

 その突っ込みの、真意の周りにドンヨリと、かかっていた靄(モヤ)が、ほんの少し、晴れてきたような気がする。

 「つまり、守る!、ことと、文化的なモノに、芸術に、首輪をつける、ことは、全くもって、その根底から違う、ということだ」

(つづく)