ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.531

はしご酒(4軒目) その百と百と七十二

「ヤマジロ ジロジロジロリ」①

 地野菜を購入しに、たまに訪れる道の駅から、それほど離れていないところに、南北に、細長く伸びつつコンモリと、可愛くそびえ立つ山のその頂(イタダキ)に、以前から、訪れよう訪れようと思い続けてきた城跡がある、とAくん。満面に笑みを浮かべながら、「少し前に、ついに、決行したんだ。コンパクトながらも戦国時代の山城の、ダイナミズムがシッカリと、体感できたんだよな~」、と、スッカリ満足感まみれのAくんなのである。

 そんなAくんに、「その、戦国時代の山城のダイナミズム、って、どういうものなんですか」、と私。

 昔から、それなりに城好きであった私も、城跡、となると、残念ながら、その良さを理解する力を、全く持ち合わせてはいない。

 「防御力重視の南北数百mにも及ぶ細長い城郭、土塁、深い切り通し堀、などなど、マニア垂涎の的(スイゼンノマト)とも言えるその佇まいが、まさに、that.'s 戦国の山城、だということだ」

 と、言われても、建造物としての城郭に興味がある私には、やはり、ピンとこない。

 「こじんまりと開けたところから下界を見下ろしながら、ほんの少し、当時の城主の気持ちに近づく、そんな気分だったな」

 下界を見下ろす城主。いかにも、権力者、という感じで、Aくんには申し訳ないが、それほどいい気分ではない。

 「そのとき、あることを、俄に思い出したわけ」

 城跡には、いまひとつ興味が湧いてこないけれど、その、俄にAくんが思い出した、その、あること、には、なんとなくながらも聞いてみたくなる。(つづく)