ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.523

はしご酒(4軒目) その百と百と六十四

「ブンカ ゲイジュツ ミツ ノ アジ」

 ムンムンと湿っぽく、グチャグチャッと密集した、不思議にワクワクするような、そんな熱を帯びた、凝縮感のある闇の中から、脈々と、類稀(タグイマレ)なる個性が、その結晶が、いくつも生み落とされてきたような気がする、とAくん。

 あまりに抽象的で、どう理解したものかと思い倦(アグネ)ていると、すかさずAくん、こう言い添える。

 美術も音楽も演劇も映像も、ありとあらゆる芸術の、その、光り輝く申し子たちは、養成学校のようなところで、皆とともに、几帳面に学び、真面目に努力を積み重ねてポンと誕生、というような、そんな単純なものじゃないんだ、と。

 その意味をトンと理解できず、思い倦ねていた私の心の中に、ナニかがストンと気持ちよく落ちたような気がしたものだから、妙に嬉しくなる。

 文化も、芸術も、蜜の味、ならぬ、密、の、味。

 過去から現在、母なる密から生まれ落ちた、個性の結晶たちに、そして、未来に向けて、これから、生まれ落ちていくであろう、新たなる個性の結晶たちに、乾杯。(つづく)