ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.414

はしご酒(4軒目) その百と六十五

「キ ハ ヤッパリ キ ダナ」①

 我が家から4㎞圏内のいつもの散歩コースには、なぜか、断食道場やらハーブの生産直売店やらがあったりする。どちらも前を素通りするだけで、お邪魔したことはない。実際は、そんなことはないのだろうけれど、なんとなく怪しく見えて、どうも近寄りがたい。

 そんな散歩コースのそのあたりに、同じように怪しく見える古い看板が何枚かぶら下がっている。そのうちの一枚に、「氣」という漢字が一文字、大きく筆書きされたホーロー製の、かなり錆び付いた看板があるのだけれど、その真っ黒でワイルドな「氣」という文字のことが、なんとなく気になっている。

 私は、人というもののその中心にあるべきものが、「気」だと思っているし、その「気」が、充満していてこその人である、とも、思っている。

 そんな、人の「気」が、ナニかの弾みで、大規模に、集団的に、萎み始めたその途端に、たとえば、あまり好きでも得意でもない分野である、あの巨大な「経済」というもの、にさえも、大いなる影響を与えて、いとも簡単に、一気に萎ませてしまう。図体ばかりが肥大化した「経済」という怪物も、実は、小さき人のその「気」というものに、大きく左右される小心者、なのかもしれない、ということを、私たちは、安易に忘れるべきではない。(つづく)