ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.413

はしご酒(4軒目) その百と六十四

「ヨウカイ イロガツクツクボウシ ノ キョウフ」⑤

 「そんなに気落ちしなさんな」

 「気落ちもナニも、ようするに、つまり、言う側も言われる側も、どちら側も、議論ベタ、ゆえに、ナンともカンとも・・・なんですよね」

 「ま、そうなんだけどね」

 どちら側も議論ベタであるからこそ、この国の古(イニシエ)からの美徳である致し方なしの苦肉の策、言わぬが花、沈黙は金、は、賛辞を贈られることはあっても、批判される筋合いはない、ということなのであろう。

 悲しい結論ではあるけれど、冷静になって考えれば、それもまた一つの正道(ショウドウ)と思えなくもない。

 

 

 「だからこそ、教育なんだと、思っている」

 「えっ」

 自分なりに無理やり結論づけ、終止符を打ちかけていただけに、またまた、おもわず「えっ」と声を上げてしまう。

 「若いときから議論に慣れ親しむことが大事だ。そのためにも授業の中に、ディスカッション、というよりは、この場合は、ディベート(debate )かな、ソイツを工夫して入れ込む。ケンカでもない、非難でも誹謗中傷でもない、より真理に近づくがための議論、もっともっと身近なものにしていかないとな」

 遅れ馳せながらのAくんの、光り輝くカウンターパンチが、気持ち良すぎるぐらい腑に落ちるし、腑に沁みる。

 もし、ジワリジワリと、より多くの若者たちが、そうした授業を通して、議論とはナニか、その内なるモノを掴みとるコトができたとしたら、少なくとも、おそらく、ネット上などで、名を名乗ることなく特定の人間を名指しで非難しまくる、というような特異な行為は、自ずと、ジワリジワリと、影を潜めていくような気がする。(つづく)