ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.406

はしご酒(4軒目) その百と五十七

「ユカイハン ト カネノモウジャ ト ソノナカマタチ」③

 ようやく集まった悪魔たち、しばらくの間は寡黙であったのだけれど、にわかに、ナニやらボソボソと呟き出す。そのことに気付いた私は、反射的に聞き耳をたてる。

 「弱りきったヤツらがドップリと困った顔をする、たまらんよな~、ブヒヒヒヒ」

 「ちょっと冷静に考えれりゃ、マジかデマかぐらいのことは、わかりそうなものなのに」

 「弱り目に祟(タタ)り目」

 「そうそうそうそう、冷静に考えられないほど弱っているからこそ祟りがいがある、ってもんだな、笑えるね~、デヘヘヘヘ」

 我が家の悪魔たちとはいえ、その呟きの、あまりの悪魔悪魔さに、おもわず耳を塞ぎたくもなったのだけれど、それを上回る好奇心が、さらに私の耳の精度を上げたものだから、自分のことながら、少々驚く。

 「ムカつくヤツに正義の鉄槌(テッツイ)を下す!」

 「あるあるあるある、正義のデマね。悪魔的には邪道なんだろうけど、悪魔にも正義はあるんだってとこは、一応、見せておきたいよな~、ムフフフフ」

 なんて手前勝手な理屈を、バカみたいに繰り広げているんだろう、コイツらは、と、唖然としたそのついでに、ココは注意の一つでもしておかねば、などと思ったりもするのだけれど、またまた好奇心が、そんな私を、「ま~ま~ま~ま~」と宥(ナダ)めすかす。

 「悪魔的な王道としては、都合の悪いヤツを潰すために、都合のいいデマを流しまくる、言うなれば、悪魔の鉄槌を下す!、これだな、これ」

 「そのことによって、より大きな金(カネ)やら権力やらを手に入れることができれば、願ったり叶ったり、申し分ない、ガハハハハ」

 そんなナンともカンともな呟きをリアルに耳にするにつけ、悪魔たちの大家(オオヤ)として、世間に顔向けができない、という後ろめたさも、それなりにあるにはあるのだけれど、もうコイツらも立派(でもないか)な大人なんだから、犯した罪は自ら償わないと、などと、適当な言い訳で逃げ切ろうとする私。

 それにしても、呆れ果てるほど、トコトン性根(ショウネ)が腐りきった悪魔たちだな、と、あらためて思ったりしているうちに、なんだか、身も心も・・・重たくなってくる。(つづく)