はしご酒(4軒目) その百と四十七
「オレヲ テラス タイヨウ」①
自分の力だけで、自分を輝かせることなど、そう易々とできることではないけれど、幸いなことに、俺には、俺を照らす太陽がある、みたいなことを、誰かが言っていた、とAくん。
俺を照らす太陽か~・・・。
「俺を照らす太陽。なんか、カッコいいですね」、と私。
「好きな言葉なんだよな。誰の言葉であったのかは覚えていないけれど、その言葉だけは、なんとなく忘れられないままでいる」、とAくん。
たしかにカッコいい。でも、そのカッコいい言葉を何度か頭の中で繰り返しているうちに、ナニが、カッコいいのか、そして、その太陽とは、いったいナンなのか・・・、ジワリジワリと謎のベールに包まれ出す。
「カッコいいですけど、その太陽って、ナンなのですか」、と、Aくんに、その、覆い被さろうとする謎のベールを剥ぎ取ってもらおうと、尋ねてみる。
「そうだな~」
そう呟くとAくんは、いかなる謎も解き明かす、ちょっとした名探偵の如く、推理の世界にでも身を投じたのだろうか、再び、しばらくの間、黙りこくってしまう。
黙りこくってはしまったのだけれど、私は私で、再び、女将さんとのホッコリタイムを、その流れの中でごく自然に、もつことができたわけで・・・。(つづく)