ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.389

はしご酒(4軒目) その百と四十

「トラワレ カラノ カイホウ」②

 ま、いいか~、と、コチラはコチラで、女将さんが勧める、オール能登の従兄弟(イトコ)筋にあたる超辛口をいただく。力強く毛筆で朱書きされた漢字2文字のラベルも眩しく、一層期待が膨らむ。

 「いいですね~。もっとドライでガツンとしたワイルド系かと思いきや、思っていたよりもウンとバランスがいい」

 「でしょう」、と女将さん。

 少し重めの料理にも負けない、今、ちょっとイチオシの純米吟醸酒、だという。

 たしかに、このイカの塩辛とも、これ以上ないのではないかと思えるほどの好相性である。

 などと悦に入っていると、どこからともなく、微かにブツブツと聞こえてくる怪しげな呪文。もちろん、出どころはお隣さんなのだけれど、どこか懐かしい響きでもあったものだから、不思議な気分になる。

 そういえば、ウチの祖母が、毎日、朝早くに、仏壇の前で、これとよく似た呪文を唱えていたことを、今、思い出す。

 あれだ、あれと同じ呪文だ。

 仏壇の前にチョコンと鎮座する祖母の後ろ姿が、8Kレベルの鮮明度で蘇る。(つづく)