はしご酒(4軒目) その百と四十
「トラワレ カラノ カイホウ」②
ま、いいか~、と、コチラはコチラで、女将さんが勧める、オール能登の従兄弟(イトコ)筋にあたる超辛口をいただく。力強く毛筆で朱書きされた漢字2文字のラベルも眩しく、一層期待が膨らむ。
「いいですね~。もっとドライでガツンとしたワイルド系かと思いきや、思っていたよりもウンとバランスがいい」
「でしょう」、と女将さん。
少し重めの料理にも負けない、今、ちょっとイチオシの純米吟醸酒、だという。
たしかに、このイカの塩辛とも、これ以上ないのではないかと思えるほどの好相性である。
などと悦に入っていると、どこからともなく、微かにブツブツと聞こえてくる怪しげな呪文。もちろん、出どころはお隣さんなのだけれど、どこか懐かしい響きでもあったものだから、不思議な気分になる。
そういえば、ウチの祖母が、毎日、朝早くに、仏壇の前で、これとよく似た呪文を唱えていたことを、今、思い出す。
あれだ、あれと同じ呪文だ。
仏壇の前にチョコンと鎮座する祖母の後ろ姿が、8Kレベルの鮮明度で蘇る。(つづく)