ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.377

はしご酒(4軒目) その百と二十八

「スナヤマ ト スナバ」②

 そして、その砂山は、ある時は溶岩が流れ落ちる火山に、またある時はトンネル工事の現場に、などなどと姿を巧みに変えて、当時の私たちを飽きさせることなど、微塵もなかったのである。

 とくにトンネル工事では、せっかく買ってもらった『サンダーバード』のジェットモグラが、予期せぬ崩落事故によって生き埋めになる、という大惨事まで起こしてしまう。しかし、そんな大事故を起こしてしまったわりには、逆にそれが、面白くて面白くて仕方がなくて、ナニからナニまでドンドンとエスカレートしていったりするわけだ。

 そんなある日、突然、魅力に満ち溢れた砂山の日々が終焉を迎える。

 「危ないから離れてないとダメだよ~」などと言いながら、作業服を着たおじさんたちが、私たちの聖域に、ズカズカと土足で踏み込んできたのである。

 「素晴らしい砂場をつくってあげるから、楽しみにして待っていてね」

 素晴らしい砂場をつくってほしい、なんて、一度だって頼んだことがない私は、子どもながらに、「頼みもしていないのにナゼだろう」みたいなことを、そのあと、しばらくの間、なんとなく、思い続けていたように記憶する。

 大人たちと子どもたちとの境目にある、埋まりそうでいて、まず埋まらない溝は、まさに、そういうことなのかもしれない。

 お察しの通り、おじさんたちには申し訳ないけれど、せっかくつくってくれた、その素晴らしい砂場で遊んだ、という記憶は、私にはない。(つづく)