はしご酒(4軒目) その六十
「ビッグエックス ガ スキ!」
敬愛する手塚治虫氏の作品群の中で、とくに、『ビッグX』が大好きなんだ、と、Aくん。
『ビッグX』、たしかTVでも放映していた、と記憶する。そして、さらに、私の頭の中の(中古で旧式の)コンピューターをフル稼働してみる。
そうだ、そうだった。
数ある漫画の中で『ビッグX』だけ(であったかどうかは、定かではないけれど)が、敵役が、架空の犯罪組織ではなく、リアルに「ナチス・ドイツ」であったのである。それゆえに、子どもながらに、妙に、重く、恐ろしく、感じたことを、今でもハッキリと覚えている。
「その、大好きな理由、って、なんなのですか」、と私。
「怪獣でも、宇宙人でも、単なるロボットでもない、人による政治と科学の力、が、一歩踏み間違えると、そのまま悪魔そのものになってしまう、というトコロが、到底、子ども向けの漫画とは思えない。のだけれど、にもかかわらず、ちゃんと、子ども向けの漫画になっている、わけで、ソコがホントにスゴい、と、思うんだよな~」、と、少し興奮気味のAくん。
なるほど、そう言われると、たしかに、その通りかもしれない、と思えてくる。
もちろん、全てというわけじゃないが、あの頃の漫画は、戦争を、いい意味でシッカリと引きずっていた。私はソコに、あの頃の作者たちの平和に対する熱き思いを、感じざるを得ないのである。(つづく)